エンゼルスの正捕手ジョナサン・ルクロイが本塁上でのクロスプレイで激突し、一時は起き上がることもできないほど意識朦朧の状態だった。CTスキャンを受けたところコンカッション(脳震盪)と鼻骨骨折の恐れがあると診断されている。
事故が起きたのは、前半戦の最終戦。アストロズの本拠地。10対10で迎えた終盤の8回裏、アストロズの攻撃。1死満塁からライトフライを打ち上げて三塁走者ジェーク・マリスニックがタッチアップで逆転を狙ったシーン。
ライトのカルフーンは強肩で有名。このシーンでも好返球でタイミングは完全にアウト。それを感じた走者のマリスニックがホームベースの前方内側で構えるルクロイに向かって肩からタックルをしたように見えた。
アメリカンフットボールではよく見るシーンで、走者は、ホームベースではなく禁止されている捕手に向かってショルダータックルをしたように見えた。
MLB.comの記事では、エンゼルスのブラッド・オースマス監督のコメントを紹介。元捕手の指揮官は「クリーンなプレイには到底見えなかった。実際に何が起きたのか分からないが、マリスニックは左に1歩踏み出し、腕をあげたまま突っ込んでいったように見える。MLBは再確認すべきだ。率直に言えば、何か処分を下すことを検討すべき」と話したという。
筆者も全くの同意見だ、走者は明らかに内側に入っている。信じられない行為だ。野球をやっていた人ならわかるが、通常はライン上か、その外側を走る。ところが走者のマリスニックは内側(左側)を選んだ。故意ではないかもしれないが、過失を問われても仕方がないだろう。MLB機構は、15年制定した「コリジョンルール」に則って厳正な処分を下すべきだ。
同じ捕手でもあるカージナルスのヤディアー・モリーナは自身のインスタグラムでこのプレーに対して、放送禁止用語も乱発して「ふざけるな!!! MLBはこのふざけたプレーに対して動くべきだ! クソ! ルクロイのために祈る!」とし、走者のマリスニックを猛烈に批判した。
Yadier Molina wasn't a fan of Jake Marisnick's collision with Jonathan Lucroy. https://t.co/B6VPTgpsft pic.twitter.com/7KPiGM9Zn2
— Bill Baer (@Baer_Bill) 2019年7月8日
当事者のマリスニックも走路変更の判断の拙さを認め反省のコメントをしているが、何らかの処分は避けられないだろう。MLBは規定に従って処分しなければ、「故意でなければ、何でもしていい」という事になる。
NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)ではコンカッションと診断されて選手は試合に出ることができず、結果的に早期引退に追い込まれる選手も少なくない。
この問題は、NFLを相手取った元選手側からの訴訟問題にまで発展し、米国の控訴裁判所は16年4月、脳疾患を抱えるアメリカンフットボールの元選手らが、NFLに補償を求めていた訴訟で、NFL側が推定10億ドル(約1090億円)を支払うという和解案を支持している。
◇記事参考
https://www.afpbb.com/articles/-/3084418
Geez Jonathan Lucroy got lit up. Runner called out at the plate, Lucroy taken off on a cart.#LA #angels #laangels pic.twitter.com/ckKu4NrN41
— Markus Ingram (@MTIngram) 2019年7月7日
コリジョンルール(collision rule)とは?
11年に本塁上での激突でサンフランシスコ・ジャイアンツのバスター・ポージー捕手が左足首じん帯を切る重傷を負った。この事故をきっかけに本塁上でのクロスプレーに関する議論が高まり14年に禁止事項としてルールに加えられた。14年9月にMLB機構の野球運営部門が「捕手がボールを持っていない状態で本塁をブロックしたとしても、意図的に走路を妨害した明らかな証拠がなければ、走者をセーフにしないように」と通達し曖昧なルールに一定の基準が設けられた。16年にはNPBでも採用されている。