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【球団人事】アストロズから解雇されたクリック前GMがブルージェイズの副社長に就任

 

ブルージェイズは現地2月27日(日本時間28日)、前アストロズGMジェームズ・クリック氏が野球戦略部門の副社長に就任したと発表した。日本ではほとんど報道されていなかったので紹介したい。

 

 

MLB球団人事

 

 

ジェームズ・クリック氏は45歳。レイズで14年間、フロントスタッフとして活躍し、2017年からは球団編成部の副部長として資金面に弱点を抱えるレイズの躍進を支えていた。

 

しかし、アストロズが球団創設以来2度目となるワールドシリーズ制覇を果たしてから1週間後、アストロズを去った。


ワールドシリーズを制した直後にそのチームを編成した責任者が球団を去るという衝撃のニュースだった。

 

ESPNのジェフ・パッサン記者が報じていたが、クリック氏が1年間の契約延長の申し入れを拒絶したということだった。

 

 

 

 

この退団は、双方の合意によるものではなかったという。

 

USA TODAYのボブ・ナイチンゲール記者によると「解任」。いわゆる “Fire”(クビ、解雇)だったらしい。

 

 

 

 


クリックGMと球団オーナーのジム・クレイン氏との確執が続き、GM会議でのクリックGMの発言を受けてついにオーナーが決断してしまったという。

 

ジェームズ・クリックGMとオーナーの間の確執とはなんだったのか?


The Athleticのケン・ローゼンタール記者の記事によると、この両者には球団運営に関して「スタイルの違い」が存在したという。


オーナーのクレイン氏は短期間に結果が出る補強策を取るタイプ。

 

それが良いとか悪いとかの問題ではなくライバル球団の成績アップを目の当たりにしたMLBのオーナーの中には、以前よりも忍耐力をなくしているのも事実だ。

 

一方でクリックGMは、より総合的な視野を持ち、時間はかかっても慎重な決断をするスタイルらしい。


オーナーと編成責任者であるGM。両者がそれぞれの立場で重要な役割を担ったことがワールドシリーズ制覇に繋がったとも考えられるが、オーナーと方針が違えばやりにくいのもわかる気がする。

 

ローゼンタール氏の記事では、クリック氏が11人のスカウトと2人のGM補佐を昨年のオフシーズンに雇い入れたことなどはオーナーの意に反していたようだ。

 

優秀な現場スタッフにすべてを任せるという風にはいかなかったようだ。

 

しかし、オーナーからすればクリックGMを雇い入れた時にはアストロズは既に地区を何年も制覇して「人材は揃っていた」と考えることもできる。

 

2011年から2013年にかけて3年連連続シーズン100敗していたアストロズだったが、2015年からは若手が台頭して勝ち越しシーズンが続き、2017年からは2020年の短縮シーズンを除いてディビジョンを5シーズン制覇している。

 

“サイン盗み”スキャンダルはあったが、ジェフ・ルーノウGMの頃からリーグチャンピオンシップにもコマを進めるチームになっていた。

 

2020年2月にクリック氏がアストロズGMに就任した時にはリーグでもトップクラスの戦力を有していた。

 

オーナーの立場からすれば以前からの遺産をクリックGMが引き継いだとも考えられる。

 

オーナーからクリックGMへの「1年契約」という打診内容は、侮辱以外の何物でもなかったというのも理解できるが、スタイルの違いやもともと強いチームを引き継いだという事への過小評価もわかるような気もする。

 

クリック氏が同地区ライバルチーム(エンゼルスやレンジャーズ)の球団幹部に就任すればもっと面白かったのに。ひょっとしたら数年後にはそれもあるかもしれない...