MLB メジャーリーグ物語

海を渡ってMLBで活躍する日本人メジャーリーガーたち

レイズの新戦術?集団クローザー制、今季は14人がセーブを記録

 

ドジャース総年俸の約4分の1、約7083万ドルという低予算のなか100勝(62敗)という成績でア・リーグ東部地区を2年連続で制したタンパベイ・レイズの新戦術に注目したい。

 

新しいトレンド? 集団クローザー制に注目

 

 

低予算レイズの苦肉の策?

 

試合の中でのブルペンへの依存度は高まるばかりだが、短期決戦のポストシーズンになればその重要性はさらに高まる。

 

週刊ベースボール編集長で、CSスポーツチャンネルでMLB中継の解説者も務めるスポーツ・ジャーナリストの出村義和さんによるとレイズは先発不足を補うために「オープナー」や「ブルペンゲーム」を取り入れ、独創的なアイディアで戦略、戦術化してきたという。

 

メジャーの場合、先発ローテは5名。それを中4日でローテーションするのが一般的だ。

 

ただ、エリートスターターと呼ばれる先発投手たちは一人15億~20億円以上と高額で、そうした投手たちを何人も揃えられるチームは、ほとんどない。

 

例えば、マックス・シャーザーを獲得したメッツは来季、シャーザー(4333万ドル)とジェイコブ・デグロム(3410万ドル)だけで、レイズの総年俸を超えてしまう。

 

これは極端な例かもしれないが、そこまで資金を出せない低予算のレイズ監督ケビン・キャッシュが考え出したのが「オープナー」や「ブルペン・デー」などだ。

 

最初は急場しのぎの“奇策”と思われたが、出村さんによれば、「ケビン・キャッシュ監督の独創的なアイディアはその成功によってメジャーの新戦略として定着した」という。

 

 

レイズの集団クローザー制

 

その延長線上にあるのが、「集団クローザー制」だろう。今季から始まったわけではないがレイズの新戦術として確立してきた感がある。

 

実際、今季のレイズでは14セーブをマークしたディエゴ・カスティーヨなど14人のリリーバーがセーブをマークしている。同じく162試合制だった2019年も11人がセーブを記録。

 

ご存じのようにメジャーの場合、26人のベンチ入り(アクティブロースター)のうち13人が野手。残りの13人が投手で、そこから先発投手5人を引くとブルペンは8人体制が一般的だ。

 

それを考えると11人や14人のリリーバーがセーブをマークするというのは考えられない。

 

しかし、キャッシュ監督は想定内だという。「選手層を厚くして戦う。スプリングトレーニングから考え、実践してきたことだ。傘下の3Aのチームを含めて、常に選手層を意識していた」という。

 

今季のレイズは18人の新人を始め、トレードや途中解雇の選手たちなど、シーズンを通して計61選手を起用。そのうち、投手は38人にのぼり、23投手に勝利、14投手にセーブがつくという想像を超えるスタッツが残った。

 

まさに「総力戦」だったわけだが、セットアッパーやクローザーなどの分業制が進むメジャーでは異例の戦術だろう。起用法を間違えれば試合が無茶苦茶になりそうだが、レイズの場合は、これで結果を出しているのが凄い。

 

成功のカギは、細かいデータ収集、分析。対戦相手との相性やマッチアップを緻密に計算している分析力がチームの勝利を支えている。

 

キャッシュ監督を含めたスタッフとその分析をよく理解している選手たちの勝利と言えそうだ。

 

レイズのブルペン防御率は3.24でMLB1位。リリーバーだけで58勝42敗。8セーブをマークしているアンドリュー・キットレッジは今季、初回から延長11回まで全ての回に投げて9勝を挙げている。

 

また、故障者が出た場合の交代要員ということだけでなく、選手層を厚くするために3Aとの入れ替えを頻繁に行った。ライアン・シェリフは何と9回も昇格、降格を繰り返したという。(シェリフは、11月5日にウェイバー公示を経てフィリーズへ移籍した。)

 

 

ファーム層が充実しているレイズならではの起用法

 

キャッシュ監督のいう「傘下の3Aのチームを含めて、常に選手層を意識していた」という発言は重要だろう。

 

メジャーリーグの場合、サービスタイム(MLS5.000)を超えた選手は自由に入れ替えができない。

 

マイナーリーグ・オプション」という規定があり、若手(3シーズンまで)は、シェリフのようにマイナーとメジャーの出し入れをウェーバーなしで可能だ。主力選手と若手有望株をトレードしてファーム層を充実させているレイズならではの戦術かもしれない。

 

監督やコーチ陣は常に下部リーグと連絡を取り、内部育成に力を入れているレイズだからできる戦術だろう。

 

補強資金に恵まれない中小フランチャイズのチームの中には、レイズの成功例を見て「オープナー」のように、「集団クローザー制」を試みるチームが出てくるかもしれない。

 

しかし、データの分析力やファーム層の充実があってはじめてレイズのように成功することを考えると、そうは簡単にはマネのできない戦術かもしれない。

 

 

 

 

▽記事参考/引用

 

www.spotrac.com

 

 

スポーツ報知「中小フランチャイズの星、独創的球団レイズは世界一を目指す」

 

https://hochi.news/articles/20211010-OHT1T51013.html?page=1