ドジャース移籍が有力視
ここでも昨年の9月5日に紹介したが、衝撃を受けたレッドソックスのムーキー・ベッツ外野手の移籍が現実のものとなりつつある。20年シーズン終了後にフリーエージェント(FA)になるベッツをレッドソックスが放出するかもしれないのだ。
The #RedSox are expected to listen to offers for Mookie Betts this winter, according to one MLB insider: https://t.co/0lHv2l0a4t pic.twitter.com/7OGAmWjk4J
— NBC Sports Boston (@NBCSBoston) August 9, 2019
レッドソックスは水面下でトレード交渉に応じ、間違いなくこのオフの最後の大型移籍になる。それは、複数の選手が絡む大型トレードに発展することが予想される。場合によっては20年夏のトレードデッドラインまでもつれ込むことも考えられたが、どうやらスプリングトレーニングまでの残り2週間以内に結論が出そうだ。
その背景にあるものは?
18年のア・リーグMVPでありフランチャイズの顔のような存在のベッツをなぜ放出するのか?
MLB Networkのジョン・ポール・モロシによるとベッツが契約延長交渉を以前に拒否したことを理由として挙げている。ベッツは17年シーズン終了後にレッドソックスが提示した8年2億ドルという長期の契約延長オファーを拒否している。
それは18年から19年にかけてのトラウト、ハーパー、マチャドといった巨額の契約で決定的になったのかもしれない。ベッツの成績やプライドから考えても2億ドル程度なら首を縦に振らなかったのは正解だった。ベッツの代理人を含む周辺が騒がしくなるのはわかる気がする。
ベッツは今季も打率.295、29本塁打、16盗塁、OPS.915を記録。97四球は前年を上回る自己最多。出塁率.391とOPS.915は前年に次ぐ自己2番目の数字。Baseball-Reference.comのrWAR6.8という高い数値を残している。そのため自身の評価を知るためにFA市場で価値を知りたくなるのは当然のことかもしれない。
考えられる要因として、レッドソックスのファーム層が考えられる。野球専門の米シンクタンク「ベースボール・プロスペクタス(BP)」やMLB公式サイトのランキング、さらに野球専門のデータサイト「ファングラフス(FG)」のランキングでも100位以内にマイケル・チャビス内野手がランクインしているだけだった。
レッドソックスはファーム層が薄い。これでは次の内部育成ができない。とくに先発投手を中心に若手の投手が育っていない。また、ブルペンは防御率でMLB14位。クローザーが不在で上原や田澤が在籍していた頃のような安定感がない。このため、ベッツを放出する対価として複数のプロスペクトを要求することは十分に考えられる。
ペイロールの圧縮
次に考えられるのは、ペイロールが緊迫している事だろう。
レッドソックスの年俸総額は約2億4050万ドルで「ぜいたく税」(Competitive Balance Tax)の上限額1億9700万ドルをはるかに上回る額だ。レッドソックスとナショナルズが今季は「ぜいたく税」を支払った。
ドジャース、ヤンキース、ジャイアンツ、タイガースが回避することに成功したようにレッドソックスもリセットしたいだろう。この追徴税のようなシステムは連続で超えると税率が年々アップしていくからだ。ちなみにヤンキースは15年連続で超過してトータルで3億4100万ドル(約350億円)を払ってきたが昨年リセットに成功した。
レッドソックスの筆頭オーナージョン・ヘンリーは、今季のペイロールをラグジュアリー・タックス(ぜいたく税)のしきい値である2億800万ドル未満にしたいという方針を打ち出した。
デーブ・ドンブロウスキー野球部門社長を解任した空席のポストにレイズで野球部門の上級副社長を務めた36歳のチェイム・ブルーム氏を招聘した。それは球団財政を圧縮するスペシャリストとしての起用だった。
2017年 1億9500万ドル
2018年 1億9700万ドル
2019年 2億600万ドル
2020年 2億800万ドル
2021年 2億1000万ドル
ブルーム氏のポストはチーフ・ベースボール・オフィサー(通称CBO)。昨オフにメッツのGM候補となっていたほか、ツインズやフィリーズからもGM候補として声を掛けられた経緯があり「スモール・バジェット(低予算)」のレイズをポストシーズンの常連チームに作り上げた実績を同じ地区のライバル球団のオーナーたちが、その手腕を見込んで白羽の矢を立てたということだろう。
▽記事参考/引用