MLB メジャーリーグ物語

海を渡ってMLBで活躍する日本人メジャーリーガーたち

レッドソックスCBOに就任予定のチェイム・ブルーム氏が取り組む課題とは?

 

レッドソックスは久しぶりに早いオフを過ごしているが、デーブ・ドンブロウスキー野球部門社長を解任した空席のポストにレイズで野球部門の上級副社長を務める36歳の敏腕チェイム・ブルーム氏を招聘する方針を固めたという。

 

 

MLB移籍情報

 

MLB Networkのジョエル・シャーマンが第一報を報じ、MLB公式サイトのマーク・フェインサンドとジョン・ポール・モロシが球団関係者の情報を報じている。

 

 

 

 

ペイロールの圧縮が取り組む課題!?

 

レイズから招聘するということは、チェイム・ブルームの取り組む課題は明確だ。デーブ・ドンブロウスキー氏のもとで肥大したペイロールの圧縮だろう。

 

ブルーム氏のポストはチーフ・ベースボール・オフィサー(通称CBO)。

 

ブルーム氏は、昨年オフにはメッツのGM候補となっていた。ほかにもツインズやフィリーズからもGM候補として声を掛けられた経緯がある。

 

「スモール・バジェット(低予算)」のレイズをポストシーズンの常連チームに作り上げた実績を同じ地区のライバル球団のオーナーたちが、その手腕を見込んで白羽の矢を立てたということだろう。

 

レッドソックスの選手に支払われる19年度のペイロールは2億4153万1030ドル。

 

【ぜいたく税基準額】

 

2017年 1億9500万ドル

2018年 1億9700万ドル

2019年 2億600万ドル

2020年 2億800万ドル

2021年 2億1000万ドル

 

 

2020年レッドソックス主力選手の年俸

 

デビット・プライス 3200万ドル

クリス・セール 3000万ドル

J.D.マルティネス 2375万ドル

ザンダー・ボガーツ 2000万ドル

ネイサン・イオバルディ 1700万ドル

ダスティン・ペドロイア 1312万5000ドル

ムーキー・ベッツ(年俸調停最終年、19年2005万ドル)

アンドリュー・ベニンテンディ (年俸調停1年目)

 

 

下記の選手たちが、フリーエージェント

 

アンドリュー・キャッシュナー投手(べスティングオプション:1000万ドル)

ヨーリス・チャシーン投手

ブロック・ホルト内野手

J.D.マルティネス外野手(オプトアウト:残り3年6250万ドル)

ミッチ・モアランド一塁手

クリス・オーウィングス内野手

ティーブ・ピアース一塁手

リック・ポーセロ投手 

 

 

不運だったドンブロウスキー氏

 

2013年に上原や田澤が活躍してワールドシリーズを制した後のレッドソックスは酷かった。14年、15年と地区最下位に低迷した。

 

あの時もオーナーたちは、今季と同じようにシーズンが終わるのを待つことなく人事を強行した。ベン・チェリントン・ジェネラルマネージャーGM)を解任して、ドンブロウスキー氏を電撃的に就任させた。

 

その後、レッドソックスは翌16年から3年連続で激戦のア・リーグ東部地区を制し、昨年はワールドシリーズ制覇を成し遂げた。

 

ドンブロウスキー氏が、タイガースのGMからレッドソックスという名門球団の編成最高責任者として2年連続最下位の球団を立て直した功績は大きい。

 

結果論だが、ドンブロウスキー氏にとって今季は、編成上で不運な部分が多かった。

 

エース左腕のクリス・セールと5年1億4500万ドル、正遊撃手のザンダー・ボガーツと6年1億2000万ドルの大型契約で引き留め工作に成功したようにみえたが、セールは序盤に不調。

 

クローザーのクレイグ・キンブレル(現カブス)とセットアッパーのジョー・ケリーをフリーエージェントで放出。その結果、投手陣はMLB19位の防御率、同22位の被打率だ。

 

昨年夏にトレードで獲得した後、ポストシーズンで活躍したネイサン・イバルディは契約を延長したが、19試合で1勝しかできず年1700万ドル(4年6800万ドル)というコスパの悪い選手になった。スティーブ・ピアースも60日間の故障者リストに入ったままだ。

 

 

JD.マルティネスとM.ベッツの去就に注目

 

マルティネスは2018年2月に5年総額1億1000万ドルで契約、20年以降は6250万ドルの契約が残っているが、今季終了後にオプトアウトの権利を有しており、残りの契約をオプトアウトする可能性もある。

 

マルティネスは昨シーズンのリーグ打点王(130打点)に加えキャリアハイの打率(.330)などで前年の得点力不足の解消に貢献。

 

とくに、43本塁打本塁打不足の打線にインパクトをもたらした。 昨年ほどではないが今季も打率.303、36本塁打、105打点、OPS.939で2年連続でオールスターにも選出された。32歳は脂の乗った年齢でオプトアウトを考えてもおかしくない。

 

ただ、守備力には疑問点が残り、ナ・リーグの球団からのオファーは厳しいかもしれない。

 

契約最終年が35歳を越える複数年契約は敬遠される傾向にあるので32歳のマルティネスにとっては、最後のチャンスだろう。

 

地元紙「ボストングローブ」のピート・エイブラハムは、フィットする移籍先としてブルージェイズマリナーズ、レンジャーズ、ホワイトソックスの4チームを予想している。

 

マルティネスがオプトアウトの権利を行使すればベッツの残留及び複数年の契約延長が見えてくる。

 

 

ベッツの残留はどうなるのか?

 

マルティネスが残留を決めた場合、ベッツの周辺があわただしくなる。ここでも9月5日の記事で紹介したが、20年シーズン終了後にフリーエージェント(FA)になるベッツをレッドソックスが放出するかもしれないのだ。

 

 

 

 

レッドソックスはトレード交渉に応じる構えだというが、それは、複数の選手が絡む大型トレードに発展することが予想され、そう簡単には成立しないだろう。マルティネスの動き次第では20年夏のトレードデッドラインまでもつれ込むことも考えられる。

 

MLB Networkのジョン・ポール・モロシはベッツが契約延長交渉を以前に拒否したことを伝えている。

 

ベッツは17年シーズン終了後にレッドソックスが提示した8年2億ドルという長期の契約延長オファーを拒否している。ベッツはFA市場で自分の価値を確かめたいというスタンスだ。

 

それは、トラウト、ハーパー、マチャドなどの巨額の契約で決定的になったのかもしれない。ベッツの成績や27歳という年齢から考えても2億ドル程度の契約なら首を縦に振らなかったのは正解だった。

 

 

ペイロール圧縮とファーム層

 

レッドソックスはファーム層が薄い。

 

ベースボール専門の米シンクタンク「ベースボール・プロスペクタス(BP)」やMLB公式サイトのプロスペクトランキング、さらに野球専門のデータサイト「ファングラフス(FG)」のランキングでも100位以内にマイケル・チャビス内野手がランクインしているだけだ。これでは次の内部育成ができない。

 

そのためベッツをファーム層の充実、若手有望株獲得のカードとして切ることは考えられる。

 

ぜいたく税の回避はドジャースヤンキースジャイアンツ、タイガースが成功したようにレッドソックスもリセットしたいだろう。

 

この追徴税のようなシステムは連続で超えると税率が年々アップしていくからだ。ちなみにヤンキースは15年連続で超過してトータルで3億4100万ドル(約350億円)を支払ってきたが昨年リセットに成功した。

 

マルティネスのオプトアウトとベッツの移籍はリンクしている。 レッドソックスの編成部門の最高責任者に就任予定のチェイム・ブルーム氏は就任早々、大きな課題に直面することになる。