クビになった男がアメリカンドリームをつかむのか!
ダイヤモンドバックス傘下3Aリノ・エーシズの26歳左腕・中後悠平投手は現地17日、メンフィス戦のダブルヘッダー第2試合で6回途中から4番手で登板し、2/3回を無安打無失点に抑えた。
この日の中後は、1死満塁のピンチ、相手の中軸を打つ左打者を迎えた場面でマウンドへ。4番ワシントンをスライダーで浅いセンターフライ。5番マルティニを速球で詰まらせてセカンドゴロに抑え、ピンチを切り抜けた。
昨シーズン終了後に、NPBの千葉ロッテマリーンズから「戦力外通告」を受けた中後悠平(なかうしろ ゆうへい)。
近大新宮高(和歌山)から近大を経て2012年にドラフト2位でロッテに入団。変則左腕としてロッテでは実働3シーズンで計37試合に救援登板し、2勝2敗6ホールド、防御率5.68だった。
しかし、15年は1軍登板なし、オフには戦力外通告を受けた。
プロ野球選手の最後の復活チャンスとなる「12球団合同トライアウト」でも結果は出せず、地域リーグのBCリーグ・武蔵ヒートベアーズ(埼玉県)に入団した。
テレビ番組がスカウトの目にとまった
しかし、その一部始終が、TBS系列の人気ドキュメンタリー「プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男」の2015年版で取り上げられ、その番組を見たメジャーのスカウト達の目に止まった。
メジャー3球団から招待選手としてスプリングキャンプへオファーを受ける中、アリゾナ・ダイヤモンドバックスとマイナー契約に至った。
ビザ取得が遅れてスプリングキャンプには参加できず、ルーキーリーグが始まった6月にデビュー。
そのデビュー戦がインパクトのあるものだった。
現地6月22日、4番手として8回表、2アウト、ランナー2塁の場面からマウンドに立った。まず、最初の打者を空振りの三振。9回も1安打を許したものの後続を三者連続三振に打ち取った。1回1/3を被安打1、奪三振4の鮮烈なデビューだった。
標高の高いマイルハイの乾燥地帯に本拠地を構える3Aリノは、通常よりもボールが飛ぶ打者有利なヒッターズパーク。Dバックスの同地区にはデンバーのマイルハイに位置するコロラド・ロッキーズなどが所属。
そのため、三振の獲れる投手は優遇される。そうしたパークファクターに中後はハマった。
ダイヤモンドバックスの傘下球団
- リノ・エーシズ〈AAA〉
- モバイル・ベイベアーズ〈AA〉
- バイセリア・ロウハイド〈A+( Adv.)〉
- ケーン・カントリー・クーガーズ〈A〉
- ヒルズボロ・ポップス〈SS〉
- AZL・ダイヤモンドバックス〈ROOK〉
ルーキーリーグは1試合。1Aで3試合無失点。A+でもリリーバーとして無失点。
メジャーでは2A(AA)クラスで大幅にプレイヤー数が絞り込まれる。中後は、日本でのプロ野球経験を買われて2Aを飛ばして3A(AAA)に昇格。
3A昇格後は7試合連続無失点で、それ以前に所属していた1Aも含めると14試合連続で失点がない。
メジャーリーグのピラミッドで最下層に位置するルーキーリーグでの初登板からわずか2カ月足らず。
9月になればメジャーは、ロースターを25人枠から40人枠に広げる。いわゆる「セフテンバー・コールアップ」という制度だが、中後の異例のスピード昇格をみれば、Dバックス首脳陣が9月昇格という方向で調整していることがわかる。