世代交代が一気に進んだメジャーリーグ
昨季のア・リーグMVPマイク・トラウト(エンゼルス)、今季ナ・リーグMVPで本塁打王のブライス・ハーパー(ナショナルズ)などの台頭で、世代交代が一気に進んだ感のあるメジャー。
ポストシーズンでカブスやメッツの若手たちが躍動したことで、それがさらに加速したように印象づけた。
カブスのクリス・ブライアント三塁手(23)は、151試合、打率.275、26本塁打、96打点、出塁率.369、長打率.488をマークし新人王に輝いた。
ブライアントは、ドラフト1巡ピックで全体でも2位。代理人は大物代理人スコット・ボラス氏というから670万ドル(約8億円)という大型契約も分かる気がするが、話題になったのは、カブスがわざと開幕ロースターを外したこと。
選手は大リーグ出場登録172日で1年とされ、6年でFA権を取得する。ブライアントはオープン戦で9ホーマー、打率.425と打ちまくり開幕ロースターは確実だった。ところがセオ・エプスタイン編成担当取締役は「守備が拙い」とマイナーに回した。
ブライアントが開幕から12日間マイナーにいると、その後メジャー昇格しても172日の登録日数に不足し、FA権取得は1年遅れの2021年になってしまう。カブスは数十億円になるはずの年俸節約が可能だ。ブライアントのメジャー昇格は開幕から13日目だった。
カブスは、ブライアント以外でもプロスペクトのカイル・シュワーバー捕手/外野手(22)が6月16日のメジャー・デビュー以来、16本塁打、46打点、打率.246、出塁率.355、長打率.487を残した。
夏にはマイナーのフューチャーゲームでMVPを獲得。ポストシーズンでも9試合で5本のアーチを架けた。
シュワーバーとブライアントに加え、カブスにはもう一人、アディソン・ラッセル(21)という期待の新人がいる。
打撃は2割そこそこで良くないが、守備での貢献度が大きいためWARなどのセイバーメトリクス(野球の統計分析)系の数値が高く、レギュラー遊撃手の座を25歳のスターリン・カストロと争っている。
アメリカンリーグでは、22本塁打のカルロス・コレア内野手(アストロズ)が打率.279で新人王を獲得した。
さらに、他のチームでも
26本塁打を記録しているジョク・ピーダーソン外野手(ドジャース)
粗削りで率は低いが長打力のある若者たちが湧き出るようにロースターに名を連ねた。
彼らに加えてマット・ダフィー内野手(ジャイアンツ)は打率.295、12本塁打と活躍。彼らは、いずれも1、2年目の選手たちだ。
さらに、川崎とポジションを争ったデヴォン・トラビス内野手(ブルージェイズ)は故障が多かったが62試合で打率.304、出塁率.361を残し、殺人スライディングで負傷した姜正浩内野手(パイレーツ)などは、126試合で打率.287、15本塁打とチームの主軸として活躍した。
投手でも先発のタイラー・ユングマン(ブルワーズ)は9勝、ネイサン・カーンズ(レイズ)7勝、ノア・シンダーガード(メッツ)9勝などが台頭した。救援ではチェーセン・シュリーブ(ヤンキース)らがチームを支えた。
NFLのようにサラリーキャップはないが、MLBでは、2002年8月30日に締結された労働協約において、球団側が選手に支払う年俸総額が一定額を超えた場合、超過分に課徴金を課す「贅沢税」が導入された。
そうした事も影響してか「大型補強」より「若手の育成」に切り替えたメジャー。世代交代は今後ますます加速することが予想される。
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