MLB メジャーリーグ物語

海を渡ってMLBで活躍する日本人メジャーリーガーたち

メジャー好投手の共通点「初球ストライク」をとれる投球術

 

「初球ストライク」を取れる制球力と投球術

 

以前にも紹介した好投手の共通点。それは、100マイルを超える快速球でもなければ、カットボールでもない。低めにボールを動かす投球術でもない。最大の特徴は、毎試合、彼らを観察すれば見えてくる。

 

 

確かに空振りを獲れるスピンの効いたマックス・シャーザーのフォーシームやコービン・バーンズのファーストカッターは魅力的だが、そうした好投手たちを観察すると決め球よりもむしろ「初球ストライク」を取れる制球力が際立っていることに気づくはずだ。

 

 

制球力の大切さは、どのテキストを読んでも書かれているし、多くの野球評論家が「制球力」の大切さを強調する。

 

 

単純かもしれないが、これがなかなか奥の深い投球術といえる。もちろん、打者もそれはわかっていて、メジャーの場合、初球を狙ってフルスイングしてくる。甘く入ると簡単にスタンドインされてしまう。

 

 

 

 

メジャー屈指の左腕クレイトン・カーショーとバッテリーを組むA.J.エリス(カーショー専属捕手)を取材したジャーナリストの記事が興味深かった。

 

 

「フォーシーム、スライダー、カーブがすべて超一流」と持ち球がいいのは当然として、カーショーの凄さをその捕手は、こう分析している。

 

 

「まず、1球目にストライクが取れる。これが大事。これは簡単なようで簡単なことじゃない。相手打者の情報を分析した上で、きちんとした技術が要求されるからだ。カウントを先行させることによって、打者に対して攻撃的(アグレッシブ)になれる。追い込んでしまえば、クレイトンには三振を取れる球があるから、相手打者を守勢に立たせることが可能になる」と、現役メジャー最高クラスの左腕クレイトン・カーショーの能力の高さを解説している。

 

 

投手の肩やひじは消耗品という感覚がメジャーでは常識。球数制限をスプリングトレーニングから強要するメジャーでは、マイナーリーグの段階から、ストライクを先行させて球数を減らすことを指導する。それが、投手自身の選手生命に直結するからだ。

 

 

これはなにも先発投手に限った話ではなく、ブルペンのリリーフ投手も同じこと。球数を減らして、マウンドにいる時間を少なくすることは疲労を極力抑え、連戦連投に耐えうる肉体的、精神的な体力を保つことにつながる。

 

 

初球の攻防戦に注目!

 

日本では、初球を打たれた投手を叱責する傾向がまだ残っている。それが「初球は臭いところから」という発想につながり、「打者優位のカウントになってしまうことが少なくない」と、スポーツキャスターが言っていたが、それは傾聴に値する分析だ。

 

 

たしかに戦術的にボールから入って様子を見ることも必要なシーンもある。しかし、毎回、そんなことをしていたら6イニング投げるとして18人の打者に18球のロスになる。

 

 

それは、1イニング分の球数になり、先発の場合、6回3失点はクォリティースタートだが、5回3失点では先発として「試合を作る」ことはできないし、当然として評価は落ちる。

 

 

一流投手と二流の違いは初球ストライクの完成度の違いに現れる。

 

 

初球の攻防戦に注目して見ると、その投手の技術力の高さがわかる。また、初球からの攻防は、アグレッシブなゲーム展開につながり、スピード感あふれるゲーム展開につながる。

 

 

ボールを置きに行くのではなく初球ストライクの質の違い。芯を外して内野ゴロに打ち取る投球術。空振りを奪い、ファールにさせる投球術。そんな「初球ストライク」の投球術に注目したい。