2021年夏のトレード・デッドライン前の動きをディビジョン別球団別に予想しているが、今回は、その第6弾をお届けしたい。
6月も最終週に入った。7月末に設定されているトレード・デッドラインまで残り約1ヵ月、そろそろ各球団とも自軍の位置(順位)を見ながらポストシーズンに向けての足りない戦力を補強するのか、それとも今季は諦めて主力を放出して有力な若手を獲得していくのか、ゼネラルマネージャー(GM)以上の球団幹部が忙しくなってくる時期だ。
トレード期限前の移籍情報
ここでは、日本時間6月29日終了時点での順位を考慮して各球団の注目選手、またはニーズを探っていきたい。
まずは、いくつかの球団のペイロールを紹介する。数球団が「ぜいたく税」の限界に達しつつある、ご存じの方も多いと思うが、これはNFLのようにサラリーキャップのないMLBで30球団の戦力均衡が目的で設定されている課税制度。補強の際にはこの「しきい値」が足かせになることもある。
MLBは2003年にこの制度を導入。ヤンキースなどは15年連続で税金を納め続けていた。ドジャースも5~6年続けて課税されている。
MLB2021 CB Tax TOP6
①ドジャース:$262.1million(2億6210万ドル)
②ヤンキース: $207.6 million(2億760万ドル)
③アストロズ: $207.0 million(2億700万ドル)
④パドレス: $205.6 million(2億560万ドル)
⑤レッドソックス: $205.5 million(2億550万ドル)
⑥フィリーズ: $202.5 million(2億250万ドル)
※上限は$210.0million(2億1000万ドル)
▼参考
Cot's Baseball Contracts
トレード期限前の各球団別注目選手をピックアップするとしたら?
第5弾は、ナショナル・リーグ東部地区。パドレスの積極補強で先発ローテーションが安定したパドレスが昨年のワールドシリーズ王者で、地区9連覇中のドジャース帝国にどんな戦いをするのか?
SFジャイアンツも好調で、後半戦も三つ巴の戦いから目が離せない地区だ。
ジャイアンツ
50勝1番乗り。どの解説者がこの展開を予想しただろうか?
2強と思われたドジャースや大補強のパドレスを抑えて首位。しかも勝率でも断トツのMLBトップ。球団関係者の笑いは止まらないだろう。
チームの快進撃を支えている投手陣は防御率で4月の2.29から5月の3.46、6月の4.52に下降気味。それでも先発陣はMLB全体で3位と踏ん張っている。ブルペンも同5位だが、ポストシーズンの需要は増えるのでリリーバーを補強することも考えられるが、外野手も層が薄い。
「どうすればドジャースを倒すことができるか?」、そして地区の覇権を取り戻せるかを考えた場合、最後のピースをはめ込むとすればマックス・シャーザーかもしれない。
ケビン・ゴーズマンのクールダウンを考えても先発投手は何人いてもいい。プロスペクトのマルコ・ルシアーノとジョーイ・バートが交換要員になる。
ドジャース
主力に故障者が続出したが、終始一貫、ドジャースのこの地区における支配権は変わらない気がするが、60試合制とはいえワールドシリーズを制した翌年なので、こんなものかもしれない。
コディ・ベリンジャー、マックス・マンシーが戻り、コーリー・シーガーも復活すればラインナップは改善する。
懸念されたケンリー・ジャンセンも好調でセットアッパーのブレイク・トレイネン、ビクター・ゴンザレス、ジミー・ネルソンも悪くない。
ただ、10月の事を考えてブルペンを強化することは考えられる。パイレーツのクローザー、リチャード・ロドリゲス(防御率1.78、10セーブ)も候補の一人だろう。
今季終了後にフリーエージェント(FA)になるのは、野手ではクリス・テイラー、コーリー・シーガー。投手ではケンリー・ジャンセン、クレイトン・カーショー、ジミー・ネルソン、コーリー・クネイブル(負傷中)ら。
パドレス
エリック・ホズマーが打率.249、本塁打6、OPS.659と不振だが、実績のある選手が少なかった若いチームで彼にはクラブハウスでのメンター的な役割を期待されているので、チームは彼をベンチに下げる気はない。
そのためジェイク・クロネンワースを二塁からをユーティリティの役割に移して、二塁手としてロッキーズのトレバー・ストーリーを獲得するという案もある。ストーリーは遊撃手なのでタティスJr.の肩の傷害保険にもなる。
プランBとしてはマリナーズとのトレードでミッチ・ハニガー外野手を追加して破壊力をアップさせるというプランはどうだろう。パドレスはOPSでMLB12位、本塁打数で13位とドジャースと比べて見劣りする。
プランCは、マックス・シャーザーを加えることだろう。それなりの対価が必要だが、強力投手陣でドジャース、ジャイアンツを封じ込める作戦だ。ダルビッシュやスネルの負担も軽減する。それ以外はインパクトのない平凡な補強だろう。
ダイヤモンドバックス
悪夢のシーズンだろう。2年前、ダイヤモンドバックスは85勝77敗でフィニッシュした。 今季は、ロードゲームでメジャー史上ワーストとなる24連敗を記録してしまった。
アズドルバル・カブレラやエドゥアルド・エスコバーが今季終了後にFAになる。どちらもユーティリティーだ。ケーテル・マルテは誰もが欲しがる選手だが、60日間の負傷者リストに登録している。
ロッキーズ
21年―22年オフはトップクラスの遊撃手がFAになりFA市場は遊撃手の当たり年ともいわれているが、その前に対価を求めてロッキーズは動きそうだ。
トレバー・ストーリー遊撃手はホームラン・ダービーへの出場を表明しているが、ロッキーズでの出場はこれが最後になり、8月には違うユニフォームを着ている可能性が高い。二遊間のスキルポジションで打てる選手は貴重だからだ。
ロッキーズでは遊撃手だが、二塁手として獲得するチームがあるかもしれない。ストーリー以外では、ジョン・グレイ投手、C.J.クローン内野手、クリス・オーウィングス内野手兼外野手が今季終了後にFAになる。