2021年夏のトレード・デッドライン前の動きをディビジョン別球団別に予想しているが、今回は、その第5弾をお届けしたい。
6月も最終週に入った。そろそろ各球団とも自軍の位置(順位)を見ながらポストシーズンに向けての足りない戦力を補強するのか、それとも今季は諦めて主力を放出して有力な若手を獲得していくのか、判断が迫られる。
ゼネラルマネージャー(GM)以上の球団幹部が忙しくなってくる時期だ。
トレード期限前の移籍情報
やや時期尚早かもしれないが、日本時間6月28日終了時点での順位を考慮して各球団の注目選手、またはニーズを探っていきたい。
まずは、いくつかの球団のペイロールを紹介する。数球団が「ぜいたく税」の限界に達しつつある、ご存じの方も多いと思うが、これはNFLのようにサラリーキャップのないMLBで30球団の戦力均衡が目的で設定されている課税制度。補強の際にはこの「しきい値」が足かせになることもある。
MLBは2003年にこの制度を導入。ヤンキースなどは15年連続で税金を納め続けていた。ドジャースも5~6年続けて課税されている。
①ドジャース:$262.1million(2億6210万ドル)
②ヤンキース: $207.6 million(2億760万ドル)
③アストロズ: $207.0 million(2億700万ドル)
④パドレス: $205.6 million(2億560万ドル)
⑤レッドソックス: $205.5 million(2億550万ドル)
⑥フィリーズ: $202.5 million(2億250万ドル)
※上限は$210.0million(2億1000万ドル)
▼参考
Cot's Baseball Contracts
トレード期限前の各球団別注目選手をピックアップするとしたら?
第5弾は、ナショナル・リーグ中部地区。
ブルワーズ
5連勝で混戦を抜け出した。2位カブスと3ゲーム差の首位だが、地区優勝にはまだまだ油断できない状況。
先発陣の安定感はMLBトップクラス。打線はチーム打率でMLB30位、OPS25位、得点18位、本塁打数16位と低い。
そのテコ入れで5月にレイズから2対2のトレードでウィリー・アダメス遊撃手を獲得してアップグレードしている。ジャッキー・ブラッドリーJR.が打率.154、本塁打5と大不振。
クリスチャン・イエリッチも打率.252、本塁打5と本来の調子が出ていない、ケストン・ヒウラ一塁手に至っては不振でマイナー落ちも経験している。
打線の活性化のために一塁と三塁手で起用できるマーリンズのヘスス・アギラール内野手を呼び戻すことを考えても良い。
カブス
シーズン前に大型トレードでダルビッシュをパドレスに放出したほか、先発ローテからジョン・レスター、タイラー・チャットウッド、ホゼ・キンターナを含めて4枚も抜け、先発ローテのチーム防御率はMLB20位と優勝を狙えるような編成ではない。
カイル・ヘンドリックスとザック・デイビースに続く3人目のジェイク・アリエタが5勝8敗、防御率5.32で本来の力を出していないので、もう一人、安定感のある先発投手が欲しい。
ツインズのスターターのマイケル・ピネダ投手、またはロッキーズのジョン・グレイ投手らが候補になる。
ただし、今後の展開次第では「売り手」になることも考えられ、その場合はクリス・ブライアントとクレイグ・キンブレル、今季終了後にFAになるザック・デービースもトレード要員だろう。
ほかにチームの中核選手であるハビアー・バイエズ遊撃手、アンソニー・リゾ一塁手も可能性は低いが候補になる。
カージナルス
地区4位。ノーラン・アレナドをオフに獲得したが、打線はチーム打率でMLB27位、OPS28位、得点26位、本塁打数20位とブルワーズよりも酷い状況。
テコ入れとしてゴールドシュミット、アレナド、モリーナ、オニールと右利きのラインナップの真ん中に左打ちのジョーイ・ギャロ(レンジャーズ)を追加する手もある。
レッズ
地区3位、勝率5割で可能性は残るが、仮に「売り手」になった場合、先発のソニー・グレイ、ウェイド・マイリー、ルイス・カスティーヨらが、夏のトレード市場に出るかもしれない。
今後の事を考えるとマイナーリーグでほとんどの時間を捕手として過ごしたカイル・ファーマー遊撃手よりはツインズのアンドレルトン・シモンズを獲得する方が戦力になるだろう。
パイレーツ
ファンの方には残念ながら大方の予想通り地区最下位だ。あまり知らない選手が多いが、2018年に球団の最優秀新人に選出されたリチャード・ロドリゲス投手は今季29試合で防御率1.78、10セーブ。今後、対価が期待できる数少ない選手だ。