夏のトレード期限まで5週間をきった。まだ「売り手」と「買い手」球団を確定できる時期ではないが、そろそろ各球団とも自軍の位置(順位)を見ながらポストシーズンに向けての足りない戦力を補強、それとも今季は諦めて主力を放出して有力な若手を獲得していくのか、ゼネラルマネージャー(GM)以上の腕の見せ所だ。
トレード期限前の移籍予想
ということで、時期尚早だが、日本時間6月26日終了時点での順位を考慮して各球団の注目選手、またはニーズを探っていきたい。
まずは、いくつかの球団のペイロールを紹介する。数球団が「ぜいたく税」の限界に達しつつある、ご存じの方も多いと思うが、これはNFLのようにサラリーキャップのないMLBで30球団の戦力均衡が目的で設定されている課税制度。補強の際にはこの「しきい値」が足かせになることもある。
MLBは2003年にこの制度を導入。ヤンキースなどは15年連続で税金を納め続けていた。ドジャースも5~6年続けて課税されている。
MLB2021 CB Tax TOP6
①ドジャース:$262.1million(2億6210万ドル)
②ヤンキース: $207.6 million(2億760万ドル)
③アストロズ: $207.0 million(2億700万ドル)
④パドレス: $205.6 million(2億560万ドル)
⑤レッドソックス: $205.5 million(2億550万ドル)
⑥フィリーズ: $202.5 million(2億250万ドル)
※上限は$210.0million(2億1000万ドル)
▼参考
Cot's Baseball Contracts
トレード期限前、各球団の注目選手をピックアップするとしたら?
第3弾は、アメリカンリーグ西部地区。アストロズが11連勝で、ここまで健闘していたアスレチックスやマリナーズを抑えて首位を固めつつある。
■アストロズ
アレックス・ブレグマンが負傷者リストに入ったが、打線はメジャーで最高のラインナップを持っており、先発ローテーションはトップ10(防御率)で堅実だが、ブルペンが15位(防御率)と、やや脆弱。
そのため、この部分を補強するとすれば、ケンドール・グレーブマン投手(マリナーズ)が候補。グレーブマンは96~97マイルのハードシンカーが武器。19試合で防御率1.25と好調。しかも単年125万ドルの契約でリーズナブルだ。
■アスレチックス
オークランドの穴は遊撃手だろう。ロッキーズは対価の高い球団とストーリー遊撃手をトレードする用意があるようだが、ストーリーは年俸1750万ドルで、残り2ヵ月で約600万ドルの負担になる。競合する球団も多いが候補だろう。ほかにはツインズのアンドレルトン・シモンズもいるが単年1050万ドルでストーリーに比べれば負担は抑えられる。
それでも残りのシーズンで予算の少ないオークランドが補強に動くことはないものと考えたほうが無難かもしれない。
■マリナーズ
米国4大プロスポーツで最長となる19年連続でポストシーズンを逃しているが、今季は、まだまだポストシーズンへの可能性があり、予想しにくい球団だ。
今季終了後にフリーエージェント(FA)になるのはケンドール・グレーブマン投手。トレードの対価が期待できそうなのはミッチ・ハニガー外野手ぐらい。
ただ、ハニガーも2022年までマリナーズがキープできるので、焦って手放す必要はない。
彼の負傷歴と年齢(2023年には32歳)を考えれば必ずしもマリナーズが契約を延長するとは断定できないが、期待の有望株ジャレッド・ケレニックの成績(23試合で打率.096、OPS.378)を考えれば、まだまだチームの外野にはハニガーが必要かもしれない。
■エンゼルス
エンゼルスはレンジャーズ同様。今季のポストシーズンは難しいと予想する。
マイク・トラウトが戻ってアンソニー・レンドンが復調すれば大谷、ウォルシュなどを加えて強力なラインアップになるが、開幕前から誰もが感じている通り先発投手がコマ不足。ブルペンも柱がいない。
来季以降以降を考えた場合、マックス・シャーザーも候補の一人だろう。ただ、これには対価としてナショナルズはジョー・アデル外野手、またはブランドン・マーシュ外野手を求めるだろう。
2022年終了後にはジャスティン・アップトン外野手がFAになるので、外野の両コーナーには空きができ、そこにアデルとマーシュを起用したいところだが、この二人はもう少し時間がかかりそう。
来季は、プホルズの3000万ドルと2023年にはアップトンの年俸2800万ドルがなくなる。さらに今オフには12人がFAになる。2021年―22年オフは忙しくなりそうだ。
レッズの秋山翔吾外野手は今季700万ドル、来季800万ドルと手頃だ。外野の全ポジションと1番も任せられる。若手が育つまでのつなぎ役として金銭トレードでもいいかもしれない。
レッズがレースから脱落した場合は、ソニー・グレイも補強好捕だ。シャーザー、グレイの両スターターをこの夏と今季のオフに追加すれば来季以降、アストロズやアスレチックスに対抗できる編成になる。
ブルペンもツインズのアレックス・コロメイ、ハンセル・ロブレス、テイラー・ロジャースも競合相手は多いかもしれないが、指をくわえて見ていることはないだろう。
■レンジャーズ
レンジャーズは次のシーズンに向けて動き出すだろう。2022年は新しいスタジアムで3年目になり、5年連続負け越した後のプレッシャーのかかるシーズンになりそう。
ベテラン右腕イアン・ケネディはトレード要員で放出されそうだが、ジョン・ダニエルズ編成本部長とクリス・ヤングGMはジョーイ・ギャロとカイル・ギブソンの両選手をどうするかに注目したい。ともに2022年終了後にFAになる。