父方の祖母が日本人という広島の左腕クリス・ジョンソン投手が、プロ野球で最も活躍した先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」に選出された。
外国人では52年ぶりの「沢村賞」受賞
外国人選手の受賞は1964年のバッキー(阪神)以来、52年ぶり。昨年の前田健太(現・大リーグ)に続き、2年連続で広島の投手が選ばれた。
ジョンソンは26登板で15勝7敗、防御率1.85、勝率.682、投球回180回1/3、141奪三振、3完投で4項目を満たした。
主要タイトルを獲得していない投手の受賞は81年の西本聖(巨人)以来だが、「開幕から優勝まで、ローテーションを守り抜いて貢献した」(山田久志委員)など、1年間をとおして先発ローテーションの中核としてチームの優勝に貢献した部分が評価された。
先発(スターター)や中継ぎ(セットアッパー、クローザー)などメジャーリーグでは、投手の分業化を確立している。その流れは、日本のプロ野球も顕著で、近代野球のスタンダードな戦術になっている。
しかし、そういった背景があるのにもかかわらず、「沢村賞」の選考基準は古い時代のままだ。
今季は沢村賞の選考基準となる7項目を全て満たした投手はいなかった。ジョンソンと菅野(巨)が4項目を満たしただけにとどまった。
最高の先発投手に贈る賞ではなく、極端に言えば「先発完投型」というエキセントリックな投手起用に耐えた投手が基準を満たせる賞になっている。
ひと昔前の理想的な先発投手の概念で、何年も前から選考基準を見直す段階に入っている。
日本のメディアでは「6回KO」といった見出しをつけるが、メジャーでは6回、100球を投げれば、十分に試合を作ったと評価され、1年間30試合200イニング前後を投げれば、一流投手という評価で15億円近いサラリーを得ている。
今季も両リーグ最多の16勝を挙げた野村(広)でも3項目。4項目を満たした菅野は勝利数(9勝)で評価を落とし、選考委員5人のうち3人がジョンソン、残り2人が「該当者なし」という意見に割れたという。
選考委員会の堀内委員長は完投数や投球回数の基準について「クリアすることが難しくなっている」と指摘。今後、基準の見直しを進め、先発投手が6回以上を自責点3以内に抑える「クオリティースタート」を選考に加味するかなどを検討するという。
【沢村賞の選考基準】
(1)15勝以上
(2)150以上の奪三振
(3)10以上の完投試合数
(4)2.50以下の防御率
(5)200イニング以上の投球回数
(6)25以上の登板数
(7)6割以上の勝率
以上の7項目
来日2年目の助っ人は、昨季、最優秀防御率のタイトルを獲得。今季は、6月4日に早々と来季からの3年契約に合意。契約金は最大で3年総額約13億5000万円。(契約金約1億円、年俸は約3億円で、年最高1億5000万円の出来高オプション付き)。
ジョンソンは、祖母が日本人。「子供の頃から、いつか日本に行きたいと思っていた。日本で一番名誉ある賞に、言葉に表せないくらいに感激している」と受賞の喜びを語っている。
来季32歳になる左腕。NPBでの2年間の実績を引っ提げてMLB球団とのオファーを勝ち取ることもできた。
しかし、早々と広島と契約を結んだ。契約時に“広島愛”をコメントしたが、日本人にルーツを持つ選手として特別な気持ちがあったに違いない。
脂の乗り切った32歳。これまでの外国人選手なら間違いなくアメリカに帰って代理人を立てて契約しただろう。
プロスポーツである以上、オーディエンスを感動させるドラマは大切だ。第2の母国愛を見せたプロ野球選手。
時代遅れのプロトコルは改定する必要があるが、彼に「沢村賞」を与えた選考委員たちに拍手したい。