オールスターの投票を見てもわかるとおりジャイアンツの青木宣親に対する評価が日に日に高まっている。
地元メディアが称賛する青木宣親“本当の評価”
「完全メジャーリーグ選手名鑑」(廣済堂出版)などで有名なスポーツジャーナリスト・友成那智さんの現地メディアの青木に対するレポートが興味深いので、それを参考に紹介したい。
地元サンフランシスコのメディアは「ノリ・アオキ、ジャイアンツの新しい起爆装置」(ゴールデンゲート・スポーツ)、「青木は打撃成績の数字以上の値打ちがある男」(MLB.com)といった見出し付きで活躍を伝えている。
メディアが称賛しているのは次の四つの点ということで、評価の高い順に紹介すると――。
(1)際立って高い出塁率
青木は今季打撃好調で打率3割2分3厘(6月17日現在)は、ナ・リーグ打撃成績5位。そのうえ選球眼がいいため四球が多く出塁率が際立って高い。
ジャイアンツは、昨季ワールドシリーズ制覇を果たした強豪チームだが、トップバッターだけは適材が不在で、一番打者の出塁率はリーグ平均より低い3割1分4厘だった。
それが、今季は青木の加入で様相が一変。ジ軍の一番打者の出塁率は6月17日現在3割8分9厘でリーグ1位だ。
(2)メジャー1三振をしない男
これはイチローと共通している技術だが、青木は追い込まれても相手投手の決め球をカットしてしのぎ、滅多に三振しない。
ブリュワーズに在籍した一昨年は三振に倒れる頻度が16.9打席に1回で「メジャーで一番三振しない男」になった。
ロイヤルズでプレーした昨季は、やや三振が多かったが、今季は一昨年のペースに戻り、三振数がリーグ最少。5月8日から6月1日まで85打席連続無三振も記録し「メジャーで一番三振しない男」に返り咲く可能性が高くなっている。
ジャイアンツは本拠地(AT&Tパーク)がメジャー屈指の広い球場であるため、“スモールベースボール”といわれるような打線のつながりで勝利するスタイルのチームを目指している。
そのため青木の「三振しない能力」は球団首脳から高く評価されているという。
(3)1点が欲しいときのキーマン
(2)と関連するが、ジャイアンツはリリーフ陣が強力で接戦に強いチームだが、打線には機動力を発揮できる打者が不在で、昨年は、盗塁と送りバントの数がリーグ最少だった。
そのためチームが目指すところのスモールベースボールの重要なファクターである足や小技を使った攻撃ができなかった。
しかし、今季は盗塁とバントに長けた青木の加入でチームの盗塁数と送りバント数がリーグ平均レベルに増加している。1点を欲しい場面などで青木の存在が必要不可欠な存在になりつつある。
(4)意外に広い守備範囲
青木は昨年ロイヤルズでプレーしたが、4人目の外野手に守備範囲が驚異的に広いダイソンがいたため、ゲーム終盤にダイソンが青木に代わって守備固めに入ることが多かった。
それによって守備力が過小評価されることになり、ジャイアンツも守備に関しては期待していなかった。
ところがレフトで使ってみると肩は並だが守備範囲の広さは及第点以上で、広いAT&Tパークで、守備面での貢献も大きい。
ジャイアンツファンの多くは開幕前、青木に大きな期待をいだいていなかった。
年俸がメジャーの平均レベル(400万ドル=4.8億円)で、年齢も30代半ば、オープン戦での成績も悪かったので、レギュラーが務まる選手のようには見えなかったためだ。
ところがいざシーズンが始まると、走攻守すべてでハイレベルな活躍を見せ、不動のリードオフマンとなった。
オールスター投票でもついに3位まで浮上した。メジャーリーグは球団数30チーム、日本の2.5倍あるため、メンバーに選出されることは容易ではない。年俸1000万ドル超の名のある選手でも、出場経験のない選手がゴロゴロいる。
青木が選出されれば、大きな名誉になるだけでなく、来季以降の契約にも好材料になるだろう。
ジャイアンツとの契約では今季550打席をクリアすれば、来期は年俸550万ドルでジャイアンツに残留できることになっている。
しかし、それは今季の活躍に見合った金額ではない。青木が欲しいのは3年3000万ドルレベルの複数年契約だと思うが、メジャーでは30代半ばになった選手は極端に冷遇されるので、複数年契約はたやすいことではない。
それを勝ち取るためにも、オールスターに出場して箔を付けておきたいところだ。
※ファン投票で選出されなくても、現在の打撃成績を7月初旬までキープしていれば、監督推薦で出場できる可能性もかなりある。今年のオールスターはジャイアンツのボウチー監督がナ・リーグの指揮を執るからだ。