日本と台湾、野球がつなぐ両国の絆 映画「KANO」
1931年に甲子園で準優勝した
日本統治時代に起きた奇跡のドラマを描く野球映画「KANO」。魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督がプロデューサーを務め、彼の日台三部作のトリを飾る作品としても注目されています。
3月7日から開催される第9回「大阪アジアン映画祭」のオープニング作品です。
台湾の高等学校「嘉義農林」の野球部は、日本人と漢族の台湾人、それに高雄の先住民という3つの民族の選手の混成チームというのが特徴で、映画では、民族が違う選手たちが一丸となって勝利を目指す姿が描かれています。
映画の舞台は1920年代、台湾が日本政府に統治されていた時代に遡ります。この時代、日本の一部だった台湾の高校には全国中等学校優勝野球大会(のちの全国高校野球選手権)、いわゆる「甲子園」への出場資格があり、球児たちは台湾の地から夢の舞台を目指していました。
しかし、実態はどの高校もレギュラーのほとんどを日本人が占め、常勝チームとして甲子園に行くのは、いつも日本人のみで構成された「台北商業高校」だったのです。
ところが1931年、台湾予選大会に劇的な出来事が起きました。日本人と本土の台湾人、原住民による混合チーム「嘉義農林高校」の野球部が甲子園出場を決め、全国大会でなんと決勝戦にまで勝ち進んだのです!
この奇跡の背景には、近藤兵太郎という日本人監督の存在がありました。日本からやってきた鬼コーチによるスパルタ式の練習は、弱小チームをどんどん変えていきます。「KANO」とは、嘉義農林の略称「嘉農」を日本語読みした当時の呼び名。映画はタイトルどおり、近藤兵太郎を中心にしたチームの成長と、栄光の軌跡を描きます。
俳優陣は実力派が出演
日本の俳優陣は、監督の近藤兵太郎役に永瀬正敏。近藤の妻を演じるのは、こちらも実力派の坂井真紀。そして嘉義農林野球部が活躍した同じ時代、台南にダムを作り英雄となった八田與一技師役には大沢たかお。
大沢は、映画「藁の楯」撮影のため台湾に滞在した際、台湾をすっかり気に入り、また八田技師に強い興味を持ったそうで、今回のキャスティングはなんと大沢側から制作サイドに連絡して志願したという。
もう一人の日本人キャストは、ロンドンを拠点に活躍するベテラン俳優・伊川東吾。馬志翔監督自らが彼の演技にほれ込んでオファーし、近藤の恩師を演じることになった。
さらに、試合シーンの実況を、文化放送ライオンズナイターでおなじみの斉藤一美アナウンサーが担当しているなど、野球ファンにとっても見どころ満載の映画といえそうだ。
鬼のようなスパルタ指導の一方で、当時は暗黙の格差があった日本人と台湾人に分け隔てなく接したという近藤兵太郎。深みのある野球人を、役者デビュー30周年の永瀬がどう演じるのか楽しみです。