2021年夏のトレード・デッドライン前の動きをディビジョン別球団別に紹介しているが、今回は、ナショナルリーグ西部地区の5球団にスポットを当てたい。
この夏のトレードは2016年に世界一になったカブス、2019年世界一のナショナルズが「売り手」に回ったことで、ワールドシリーズ等で名前を売ったアンソニー・リゾ、クリス・ブライアント、ハビアー・バイエズ、クレイグ・キンブレルなどの選手たちが市場に放出され、西海岸の球団によるマックス・シャーザー争奪戦が伝えられるなど例年になく活況だった。
夏のトレード・デッドラインNOTE、チーム別状況
ナショナル・リーグ 西部地区
□ジャイアンツ
50勝1番乗り。どの解説者がこの展開を予想しただろうか?
2強と思われたドジャースやパドレスを抑えて首位。しかも、日本時間8月4日終了時点で勝率でも断トツのリーグトップだ。
【獲得】
トニー・ワトソン(左腕)
クリス・ブライアント(三塁手)
【放出】
ホゼ・マーテイ(右腕/マイナー)
イバン・アームストロング(右腕/マイナー)
サム・セルマン(左腕)
アレクサンダー・カナリオ(外野手/マイナー)
ケイレブ・キリアン(右腕/マイナー)
エンゼルスから救援左腕のトニー・ワトソンを追加。カブスからクリス・ブライアントをカナリオ、キリアンという2人のマイナー選手と引き換えに獲得した。
カブスはこの夏、アンソニー・リゾをヤンキース、クレイグ・キンブレルをホワイトソックス、ハビアー・バイエズとトレバー・ウィリアムスをメッツへ放出してチームを本格的に解体したが、主力の放出としては、このブライアントのトレードが最後になった。
ブライアントは移籍直後のダイヤモンドバックス戦で名刺代わりの本塁打(今季19号)をマークしている。
□ドジャース
パドレスなど、複数の球団との争奪戦で剛腕マックス・シャーザーを獲得した。シャーザーの移籍はリーグ全体のパワーバランスにも影響するだろう。
At age 37, Max Scherzer is having one of the best seasons of his career. 👀
He will make his @Dodgers debut tonight against the Astros. pic.twitter.com/nJKyenH8qa
— MLB Stats (@MLBStats) August 4, 2021
そのシャーザーは、現地時間8月4日(日本時間5日)のアストロズ戦に移籍後初登板して7回、被安打5、自責点2、奪三振10でドジャースを勝利に導いた。
【IN】
ビリー・マッキニー(外野手)
ダニー・ダフィー(左腕)
マックス・シャーザー(右腕)
トレイ・ターナー(遊撃手)
【OUT】
カルロス・リンコン(外野手/マイナー)
キーバート・ルイーズ(捕手)
ジョサイアー・グレイ(右腕)
ヘラルド・カリーヨ(右腕/マイナー)
ドノバン・ケーシー(外野手/マイナー)
シャーザーとのパッケージでトレイ・ターナー遊撃手も獲得。2対4(マイナー4選手)のトレードだった。ターナーはこの夏のオールスターゲームに初出場を果たしている。
さらに8月4日(同5日)、コール・ハメルズ投手とも契約に合意した。ハメルズは、通算163勝122敗、防御率3.43をマークしているベテラン左腕だ。
The Dodgers signed four-time All-Star Cole Hamels to a one-year contract through the 2021 season. To make room on the 40-man roster, the Dodgers designated Yefry Ramírez for assignment.
— Los Angeles Dodgers (@Dodgers) August 4, 2021
■パドレス
打線の主軸を打つ正一塁手エリック・ホズマーがオールスターまで打率.266、本塁打7、OPS.699と不振でパイレーツからアダム・フレイジャー二塁手を獲得した。
これでホズマーがこのまま調子が上がらない場合はベンチへ下げてジェイク・クローネンワースを一塁にコンバートするパターンも考えられる。
また、負傷の多いタティスJr.のカバーでクローネンワースを遊撃に回すなど、フレキシブルな起用が可能なる。
他には、ブルペンにダニエル・ハドソンを追加。ブルペンに厚みを持たせた。さらに、メッツからマリズニックを第4の外野手として獲得。
【獲得】
ダニエル・ハドソン(右腕)
ジェイク・マリズニック(外野手)
【放出】
トゥクピタ・マルカーノ(遊撃手)
ジャック・スウィンスキー(外野手/マイナー)
ミシェル・ミリアーノ(右腕/マイナー)
メイソン・トンプソン(右腕)
ジョーディ・バーリー(遊撃手/マイナー)
悪夢のシーズンだろう。2年前、ダイヤモンドバックスは85勝77敗でフィニッシュした。 今季は、ロードゲームでメジャー史上ワーストとなる24連敗を記録してしまった。この夏は「売り手」になって、正三塁手のエドゥアルド・エスコバーをブルワーズへトレードした。
また、14年目のベテラン救援右腕ホアキム・ソリアをブルージェイズに放出した。
【獲得】
メイソン・バーン(一塁手/マイナー)
クーパー・ハメル(外野手/マイナー)
アルベルト・シプリアン(内野手/マイナー)
【放出】
スティーブン・ボート(捕手)
ホアキム・ソリア(右腕)
31歳のセットアッパー役だったマイケル・ギブンズをレッズに1対2のトレードで放出した。ギブンズは、前半戦で31試合(29.2イニング)、3勝2敗8ホールド、防御率2.73、奪三振34を記録していた。
注目されたトレバー・ストーリー遊撃手のトレードは実現しなかった。
【獲得】
ケース・ウィリアムス(右腕/マイナー)
ノア・デービス(右腕/マイナー)
アシュトン・ゴードウ(右腕)
【放出】
マイケル・ギブンズ(右腕)
ストーリー以外では、ジョン・グレイ投手、C.J.クローン内野手、クリス・オーウィングス内野手兼外野手が今季終了後にFAになるが、トレード市場にはカブスやナショナルズのスター選手たちがあふれたので、彼らのトレードが実現しなかったのかもしれない。