今季のメジャーリーグ(MLB)で、年間20本以上の本塁打を記録した打者は111人。昨年は64人。年間20本塁打が100人以上出たのは1999年103人、2000年の102人以来。
1990年代後半から2000年代前半のステロイド時代を彷彿させるような本塁打数の増加だ。
- 2016年 111人
- 2015年 64人
- 2014年 57人
- 2013年 70人
- 2012年 79人
- 2011年 68人
- 2010年 76人
- 2009年 87人
- 2008年 92人
- 2007年 86人
- 2006年 91人
- 2005年 78人
- 2004年 93人
- 2003年 86人
とは言え、以前に何度かあった「クスリ」(禁止薬物)の使用による増加でもなさそうだ。
MLBで本格的なドーピング検査と薬物使用の罰則が課せられるようになったのは2004年のシーズン以降。
2003年には「バルコ・スキャンダル」があった。米国の栄養補助食品会社のバルコが多くのスポーツ選手に禁止薬物を提供していた事実が発覚。
同社の顧客リストにサンフランシスコ・ジャイアンツで通算762本塁打の世界記録をマークしたバリー・ボンズ氏ら複数の大物メジャーリーガーの名前が含まれていたことで米国では社会問題にまで発展した。
マーク・マクガイヤー
2度目の激震が走ったのは、2007年の「ミッチェル・リポート」。その報告書ではボンズ氏やロジャー・クレメンス氏(元ヤンキースなど)、アンディ・ペティット氏(ヤンキース)ら89人のプレーヤーが実名で挙げられた。
薬物の検査方法も厳格化され、2013年からはレギュラーシーズン中でも尿検査だけでなく、HGHを摘発するために抜き打ちの血液検査が実施されるようになった。
というのも、このブログでも何度か紹介したが、Aロッドことアレックス・ロドリゲス(ヤンキース)やライアン・ブラウン(ブルワーズ)、メルキー・カブレラ(ブルージェイズ)ら複数のスター選手がフロリダ州マイアミのアンチエイジング専門クリニック「バイオジェネシス」から禁止薬物(HGH)の提供を受けていた疑惑が2013年2月に浮上、いわゆる「マイアミスキャンダル」だ。
こうした経緯で、禁止薬物に対する監視や制裁は厳しく、今季の本塁打数の増加はこれとは関係ないと見たい。
では、なぜ激増したのか?
今季の本塁打数増加は、「飛ぶボールが」が影響しているのではないか、という噂が広がっている。2015年後半戦から総本塁打数が増えた。
メジャーリーグ機構は否定しているが反発係数がわずかながら増し、縫い目の高さが低くなり、より完全な球形になっているという報告もある。
これも統一球なら全選手が条件は同じで、数字がものを言うプロスポーツの世界では、否定論は出にくい。(投手は嫌がるかもしれないが)
つい先日関係者から選手の間で今年のボールは飛ぶようになったと噂し合っているとの聞いていましたが、数字の上でも明らかですね。ステロイド時代全盛の頃に匹敵しています。 https://t.co/4z5J7JMsdW
— 菊地 慶剛(靖) (@joshkikuchi) 2016年9月22日
打撃スタイルの変化もある。Fangraphsの複数のライターが「フライボール・レボリューション」という新しい理論を紹介している。
その他の原因としてスポーツ雑誌には、カットボールの流行や速球派のパワーピッチャーに打者が対応してきているなどの理由を挙げていた。
確かに精度の悪いカットボールは、打者にとっては絶好球。100マイル時代のMLBで打者にとっては、95マイル(約153キロ)程度なら、多少早い4シームで、当たればよく飛ぶ球種かもしれない。
パークファクターも影響しているかもしれない。来季、アストロズが本拠地球場「ミニッツメードパーク」のセンターフィールド付近の改装工事を発表した。あの国旗を掲げてるポールと「タルの丘」は削られて132.9メートルから125メートル程度にスッキリする。
イチロー所属のMIAマーリンズの本拠地も昨年オフに改装して左中間を前に出した。たしか、SEAマリナーズのセーフィコフィールドも数年前に左中間が大幅に狭くなった。
これらのボールパークは、「投手天国」といわれ打者にとっては不利とされていた。こうしたファクターが複合的に作用して本塁打数が増えたのかもしれない。
この記事は10月12日の記事に加筆した再ポストです。