有料観客試合で開幕したメジャーリーグだが「サイン盗み」事件が問題となったヒューストン・アストロズへの観客からのブーイングが止まらない。
MLB2021
すでにオープン戦の初戦から酷かったが、開幕戦の対アスレチックス戦でも、オークランド・コロシアムに詰めかけたアスレチックスファンから痛烈なブーイングやヤジがアストロズの選手に浴びせられた。
開幕戦から非難の嵐
ワールドシリーズを制した2017年シーズンに電子機器を使った「サイン盗み」で処分を受けたアストロズには、選手側からも反発があった。不正に対しての抗議だ。
昨年もドジャースのジョー・ケリー投手が、アストロズの打者を狙った抗議の投球で選手総出の乱闘になる騒ぎになった。
8月9日(日本時間10日)のアスレチックス戦でも両軍の選手が総出の乱闘騒ぎになっていた。
MLB機構は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危険性を理由に、乱闘騒ぎについて各チームへ警告を発していたので、ジョー・ケリー投手に対して8試合の出場停止処分を下した。
ゴミ箱がスタンドから
しかし、無観客試合だったので、ファンからの直接の抗議はなかったが、今季から行く先々でブーイングを受けている。
オークランドの次にアナハイムで行われたエンゼルス戦でも、試合中にゴミ箱がグラウンドに投げ込まれ、異様な雰囲気に包まれた。
ゴミ箱を叩いて打者に球種を知らせていたという報道があったからだろう。ファンがそれに抗議してゴミ箱を投げ入れたのだ。
ゴミ箱を叩くだけでなくホセ・アルトゥーベ内野手には球種を知らせるためのブザーを隠して身につけていたという疑惑もあった。
映像を見ていると最初はゴミ箱のような風船が外野スタンドから投げ込まれたが、アルトゥーベが打席に立つと今度は本物のゴミ箱が投げ込まれ、球場スタッフが散乱したゴミを拾い集めるシーンが映された。
「サイン盗み事件」とは?
この事件が発覚したのは、アストロズが2017年シーズンに電子機器を用いたサイン盗みを組織的に行っていたこと。
この年のアストロズはア・リーグ優勝を果たし、ワールドシリーズも制覇した。対戦したドジャースのダルビッシュ有投手がワールドシリーズ第7戦の序盤から打ち込まれたことを覚えている人も多いだろう。
8年連続負け越し、シーズン111敗のチームが突然強くなった
2009年から8年間連続で負け越し、2011年から3年間は年間100敗以上を記録したチームが2017年に101勝61敗でリーグを制し、ワールドシリーズまで制したものだから、当初は不思議だったが、懐疑の目が向けられて調査が入った。
2019年11月にはスポーツ専門サイトの『The Athletic』でケン・ローゼンタールとエバン・ドレリッチが、チーム関係者から話を聞き出し、2017年のアストロズがホーム試合でサイン盗みを行っていた事実を明らかにした。
事件の詳細は省略するが、この事件で、MLBはアストロズに対して最高額の罰金500万ドルを科し、ジェフ・ルノーGMとA.J.ヒンチ監督の無報酬1年間の活動停止、20、21年のドラフト1巡目、2巡目の指名権剥奪の処分を決めた。
アストロズはヒンチ監督とルーノウGMを解任し、首謀者と目された当時のベンチコーチだったアレックス・コーラ(現レッドソックス監督)も退任に追い込まれた。
さらに、同じく中心人物だったカルロス・ベルトラン(当時選手)で引退後に就任が決まっていたメッツ監督の座を1試合も指揮することなく解任された。
アルトゥーベやクレーン・オーナー、ダスティ・ベイカー新監督らは2020年2月13日に謝罪記者会見を行ったが、アレックス・ブレグマン内野手が陳謝したことに対してアルトゥーベは「2017年に起こったことに対しアストロズの組織全体とチームに不快だと言いたい。ファンとベースボールのゲームに与えた影響を後悔している。そしてチームは前進することを決めた」と、反省が伝わらない発言で、さらなる反感を買ってしまった。
MNsportsさんのYoutubeより
それでも開幕から4連勝で地区首位のアストロズ
それでもアストロズは負けていない、主力だったジョージ・スプリンガーは移籍して、カルロス・コレアも移籍を臭わせているが、この件で逆にチームが一丸となって団結しているようにも感じる。
ゲリット・コールやジャスティン・バーランダー(肘の手術)を失っても上位をキープしている。底力があるからだろう。
同地区のエンゼルスのマドン監督が面白いことを言っていたので最後に紹介したい。
「ブーイングがアストロズに影響を与えたとは思わない。火をつけたかもしれないが。2つのゴミ箱が出てきたのはユニークなことだった。(スタンドから飛んでくるものといえば)以前はビーチボールだったが、今はゴミ箱だ」。