メジャーリーグは現地11月19日(日本時間20日)に「ルール5ドラフト」のプロテクト期限が迫り、いくつかの球団では各種の動きがあったようだ。
MLB移籍情報
「ルール5ドラフト」
12月8日(同9日)に予定されている「ルール5ドラフト」の対象となる選手を他球団の指名からプロテクトするためには、ロースターの40人枠に登録しておく必要があり、各球団は40人枠を空けるためにロースター変更を行う必要がある。
ヤンキースとフィリーズ間でトレード
ヤンキースはフィリーズと若手同士をトレード。ヤンキースからはニック・ネルソン投手(26歳)とドニー・サンズ捕手(26歳)がフィリーズへ。
逆に、フィリーズからヤンキースへは、T.J.ラムフィールド内野手(22歳)とジョエル・バルデス投手(22歳)が移籍した。
ヤンキースは下記の5人を流出防止のため40人枠に追加
ロン・マリナシオ投手(26歳)
エベルソン・ペレイラ外野手(21歳)
スティーブン・ライディングス投手(26歳)
JP.シアーズ投手(26歳)
逆に40人枠に登録されていたクリント・フレイジャー外野手、タイラー・ウェイド内野手(兼外野手)の1軍半的な若手と27歳でメジャーキャリア8年の内野手ルーグネッド・オドーア内野手をDFAにした。
オドーアは当時ブルージェイズのホゼ・バティースタと殴り合いの乱闘騒ぎを起こしたことでも印象に残っている二塁手だが、30本以上の本塁打を3シーズンでマークするなど打席でのパンチ力もある内野手で、レンジャーズから夏のトレードでヤンキースへ移籍していた。
また、レイズは、プロスペクト右腕のブレント・ハニーウェルJr.投手をアスレチックスへ金銭トレードで放出。
さらに、有望株をプロテクトする動きとして、ジョナサン・アランダ内野手(24歳)、フォード・プロクター捕手兼内野手(25歳)、カルビン・ファウチャー投手(26歳)、トミー・ロメロ投手(24歳)の4人を40人枠に追加したことを発表している。
ガーディアンズも大量の選手を移動
インディアンズから球団名を変更したガーディアンズも大量の選手を動かしている。
ガーディアンズは、レイズとのトレードで獲得した23歳のトビアス・マイヤーズ投手も含め、11選手を新たにロースターの40人枠に登録。これに伴い7選手をDFAにした。
その詳細が気になる方はこちらで確認していただきたい。
MLBの『ルール5ドラフト』
この名称は、MLB規則の第5条に記されていることに由来する。アマチュア選手を対象とする「ドラフト会議」とは違い、球団による選手の“飼い殺し”を防ぐための制度で、要はくすぶる若手に活躍の場を広げるための制度。
毎年Aクラスのヤンキースやドジャースではメジャー40人枠へ登録できないが、Bクラスのエンゼルスやパイレーツでは40人枠に登録できて、メジャーの舞台で活躍できるかもしれない選手たちを発掘していこうという“人材活用”制度ともいえる。
複雑なので、ここではメジャー通の宇根夏樹さん(『スラッガー』元編集長)の解説を参考に説明する。
ルール5ドラフトには、「メジャーリーグ・フェイズ」と「3Aフェイズ」の2段階があるが、ここでは分かりやすくするためにメジャーリーグ・フェイズに限定して説明する。
指名対象は、プロテクト期限日(2021年は日本時間11月20日)の時点で40人ロースターに入っていないマイナー契約の選手だが、年齢制限がある。
18歳以下で契約した場合は入団から5年、19歳以上は4年が経っていなければ指名することできない(メジャーデビューしているかどうかは問われない)。
また、指名した後には制限がある。
①獲得した球団は、選手が元々在籍していた球団に10万ドルを払う(選手を元の球団へ返却することもでき、その場合は5万ドルが戻ってくる)。
②獲得球団は指名した選手を翌年のシーズンを通じて25人のアクティブ・ロースターに入れておく必要がある。そのため、獲得する側も手当たり次第に指名できず、それなりにメジャーリーグの戦力として扱わなくてはならない。
また、指名されてすぐにトレードされる選手もいる。ルール5ドラフトはアマチュアドラフトと同じく完全ウェーバー制。
ロベルト・クレメンテは「ルール5ドラフト」から飛躍
ルール5ドラフトで指名されても、多くの選手は活躍できないままキャリアを終えるが、少数ながら大きく羽ばたいた選手もいる。
1954年にドジャースからパイレーツへ移ったロベルト・クレメンテは、そこから3000安打を打ち、ゴールドグラブを12度受賞した。
直近の成功例は、2017年にダイヤモンドバックスからレッズを経てロイヤルズへ移ったブラッド・ケラーだ。2018年は救援21登板で防御率2.01を残した。
日本のNPBでも検討されているらしいが、全米30球団もありその傘下に何段階ものマイナー球団、多数の選手を抱えるメジャーリーグでは、こうしたブレークスルーのための様々な制度が必要ということなのだろう。
▽記事参考・引用
THE DIGEST「マイナーでくすぶる選手たちへの救いの手。MLBの『ルール5ドラフト』ってどんな制度?」
https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=30146