イチロー伝説
イチローのバットケースが宝物に
こんな逸話があるので紹介したい。
シアトルマリナーズ時代の2005~09年にチームメートで、2015年はマイアミ・マーリンズでイチローと一緒にプレーしたマイケル・モースが大切にしているバットケース。
当時、すでにスーパースターのイチローに、昇格したばかりのモースは緊張して声をかけられなかったという。
「きっかけは忘れてしまったけど、何かを聞いたら親切に教えてくれたんだ。それからは何か分からないことがあると、彼に聞くようになった。彼に分からないことはなかった」とモースは語る。
モースは、イチローのルーティンなど試合への準備の仕方を観察するようになったという。モースにとってはイチローがメンター的存在だったのだろう。
「何をするにも彼は100パーセントなんだ。トレーニングルームでも、室内ケージでも。全く妥協がない。あれには刺激を受けた。その後、僕はナショナルズにトレードされてしまったけど、彼のそんな姿勢から学んだことは少なくなかった」。
そのモースが大切にしているのがイチローからもらったバットケース。
「はっきりいつだったかは忘れてしまったが、イチローが『すべての打者は、バットケースを持つべきだ』という話をしたことがあるんだ」
みんなバットケースは持っているはずだが・・・
「いや、メジャーリーガーのバットケースといえば、キャンバス地のものがほとんどだろ? でもイチローにいわせれば、『バットが擦れ合って傷がつくし、湿気もついてしまう』とのことだった。それを防ぐためには、イチローが持っているような小型トランクのようなバットケースが必要で、どうしてみんな持っていないのか不思議そうだった」
この春、マーリンズがキャンプで使用していたクラブハウスの中央には、モースのバットケースが置いてあったという。イチローのケースとほぼ同じものだ。
「ある日クラブハウスに行くと、置いてあったんだ」。イチローからもらったバットケース。
以来、モースはこのバットケースを使い続けている。
「もう10年近くになるのかな。俺の宝物だ」。
今では傷だらけになったそのバットケースとイチローの“教え”を守り続けている。
※2016年6月15日の記事をリライトして再ポストしました。モースは2017年に引退し、その後は、ナショナルズなどの野球解説者をしていた。