ブルージェイズのアーロン・サンチェスとカブスのカイル・ヘンドリクスといえば昨年の両リーグ最優秀防御率投手。
タイトル獲得で一躍有名になったが、ノンウェーバー・トレードの期限にあたる7月末の時点で、この二人を知っている日本のMLBファンも少なかったに違いない。
知っている方がいればよほどのメジャー通だ。筆者もまったくノーマークだった。二人とも先発ローテーションの5番手程度の投手だったからだ。
サンチェスは、夏の時点でアトキンスGMが先発投手の後半戦への負担を減らすために先発6人制にシフトした。その際に5番手、6番手として彼の名前が挙がっていた。
Got rotation depth?
The @Cubs' and @BlueJays' projected No. 5 starters, @kylehendricks28 and @A_Sanch41, are reigning NL and AL ERA champs. pic.twitter.com/C9kzXujEld
— MLB Stat of the Day (@MLBStatoftheDay) 2017年3月27日
メジャーでは9月からは40人枠になり投手の頭数も増えるが、一番疲れがたまる8月を乗り切るために、GMのこの決断が、功を奏したのかもしれない。
サンチェスは後半戦も好調をキープ。シーズン終盤まで田中将大、マイケル・フルマーらと防御率リーグトップの座を争い、最終登板では、内容次第では防御率トップから陥落の可能性もあったが、7.0イニングを2安打1失点という見事なピッチングでタイトルを手中にした。
平均95マイル(約153km/h)の高速シンカーが中心。奪三振率はメジャー通算7.1とあまり高くなく、シンカーなどでゴロを量産するグラウンドボールピッチャー。キャリアハイの30試合先発で防御率3.00、15勝2敗(勝率.882)、WHIP1.167、FIP3.55をマークした。
4年目の今季はWBCで活躍したストローマン、J.A.ハップと共にブルージェイズ3本柱の一角を担う。
カブスのカイル・ヘンドリックス。2013年にはマイナーリーグ最優秀選手に輝き、14年7月にメジャーデビュー。和田毅投手と5番手を争った。
昨年もヘンドリックスは先発5番手として開幕を迎えた。ジェイク・アリエッタやジョン・レスターといったビッグネームに隠れた存在だった。
しかし、本拠地リグレー・フィールドで23イニング3分の1連続無失点という記録をマーク。抜群の制球力で、シンカーとチェンジアップを武器に、彼もゴロを打たせるスタイル。
31試合に登板し190イニングを投げ、防御率2.13、16勝8敗、WHIP0.98、FIP3.20を記録。サンチェスと同じメジャー4年目で最優秀防御率のタイトルを獲得した。
この二人を見れば、メジャーの先発投手のトレンドが見えてくる。
スタジアムを沸かせるような100マイル超の剛腕ではない。ボールの下を振らせて三振を奪うような剛速球ではなく、ボールの上をこすらせてゴロに打たせて取るタイプ。
球数管理を徹底しているメジャーで、ボールを動かして、少ない球数でイニング数を稼ぐ。それが防御率のアップにつながるということだ。
そんな視点で今季のメジャーを観戦すれば、また新しい楽しみ方が広がるかも知れない。