カンザスシティ・ロイヤルズは現地27日、本拠地で行われたニューヨーク・メッツとのワールドシリーズGAME1に延長14回の末、5対4で勝利。対戦成績を1勝0敗とした。
1回裏、先頭打者として打席に入ったアルシデス・エスコバーの「inside-the-park homer」で幕を開けたゲームは、オープニングから劇的なものを感じさせる展開だった。
ワールドシリーズでのランニングホームランは1929年のミュール・ハース以来86年ぶり。先頭打者ランニングホームランは史上2度目の快挙だ。
しかし、ここで紹介したいのは、速報的にお伝えしたロイヤルズ先発ボルケス投手のその後日談。
ボルケス投手は6回でマウンドを降りたが、ダグアウトに向かった彼に伝えられたのは、予期せぬ悲報だった。すでにお伝えしたように、この日の試合前に彼の父、ダニエルさんが亡くなった。
母国ドミニカで心臓マヒのため急逝した。
ロイヤルズのネド・ヨースト監督は、開始1時間前に訃報を受けたとのことだが、「非常につらかった。しかし、それが家族の希望であった、“エディーには知らせるな。ワールドシリーズの初戦に登板させてやれ”という遺志を尊重したかった」と、苦しい胸のうちを明かしている。
ボルケスは試合終了時には、すでにクラブハウスをあとにしていたが、チームメイトのジェレミー・ガスリー投手によれば、6イニングを投げたボルケスについて「見るからに憔悴しているようだった。あんな彼の姿は見たことがない。静かに、押し黙っていた。悲痛な思いでいたんだろう」と話している。
親族の「彼に今日の試合に投げて欲しい」との意向からボルケスにこの事が伝えられたのは降板後、妻に呼び出されたクラブハウスでのことだった。ボルケスは試合後チームメイトに「今日の試合に勝利してくれたことへの感謝」を伝えたという。
また、この日はワールドシリーズ史上最長タイ記録となる延長14回の死闘となったが、アレックス・ゴードン外野手がボルケスの父の死を知ったのは、終盤のことだったという。
「たぶん14回だったかな。監督の隣に立っていたら、“この試合はボルケスのために、何としても勝つ”と言われたんだ。そして、何が起こったか教えてくれた。本人も知らなかっただろうし、ほとんどの選手もそうだったと思う」と語った。
私が、この事を知った時に思い出したのは、昨年のワールドシリーズ。ロイヤルズと戦ったジャイアンツのファン・ペレスは、GAME5で8回に勝利を決定づけるフェンス直撃の2点タイムリーを放った。
この試合中、カーディナルスのオスカー・タべラス外野手が、交通事故により母国ドミニカで死亡したという訃報が入った。タベラスは22歳の若さだった。
ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)で戦ったペレスとタベラスは同じドミニカ出身で親友だった。ベンチでその事を知ったジャイアンツのペレスは、涙をこらえて打席に立った。
亡き人の御影に捧げる勝利をチームは挙げた。