ロサンゼルスの夜空が震えた。土壇場での一つのミスが明暗を分けた。現地10月9日、ドジャー・スタジアムで行われたナ・リーグ地区シリーズ(NLDS第)第4戦は、まるで映画のクライマックスのような展開で幕を閉じた。ドジャースが延長11回、フィリーズを2対1で下し、歓喜のサヨナラ勝利でリーグ優勝決定シリーズ(NLCS)進出を決めた。
NLDS GAME4
佐々木朗希、魂の3回完全投球!ドジャース、延長11回サヨナラでNLCSへ!
試合は序盤から息を呑む投手戦でスタート。両チームの先発投手が緊迫した投げ合いを繰り広げた。ドジャースのタイラー・グラスノーは6イニングを83球で投げ切り、被安打2、与四球3、奪三振8、無失点の快投を演じた。初回のピンチを三振で切り抜けた後は、2回から6回2アウトまでフィリーズ打線を完全に封じ込めた。
一方、フィリーズのクリストファー・サンチェスも負けじと力投し、両軍のスコアボードにはゼロが並び続けた。観客席は緊張と期待に包まれ、次の一球に誰もが息を呑む展開となった。

均衡が崩れた7回、そして…
両先発が降板した後、試合が動き出した。ドジャースの2番手エメット・シーアンが痛恨のベースカバーミスで走者を進めると続くニック・カステヤノスがレフト線へのタイムリー二塁打を放ち、フィリーズが先制点を挙げた。
しかしドジャースも黙っていなかった。その裏、ドジャースは7番アレックス・コールが四球を選び、8番キケ・ヘルナンデスは、しぶとくレフト前ヒットで出塁。ここでサンチェスは降板。6.1イニング95球で失点1の好投だった。
フィリーズの2番手は守護神ヨアン・デュラン。9番アンディ・パヘスがファーストゴロに倒れ、1番大谷翔平は申告敬遠で歩かされ、2アウト満塁の場面。ここでムーキー・ベッツが貴重な押し出しの四球を選び、ドジャースは1対1の同点に追いついた。
大谷は、この日もヒットは出なかったものの、四球で出塁し流れを呼び込んだ。
そして現れた“一球入魂”佐々木朗希
8回からマウンドに立ったのは、若き侍・佐々木朗希。彼が放った162キロの剛速球と鋭く落ちるスプリット・ファーストボールは、まるで稲妻のようにフィリーズ打線を切り裂いた。3イニングを完全に支配した投球内容だった。
Nine up, nine down
— Talkin’ Baseball (@TalkinBaseball_) October 10, 2025
Roki Sasaki has been flawless tonight out of the bullpen pic.twitter.com/IoIgJroDEX
運命の11回裏、そして歓喜の瞬間
延長11回、ドジャースは満塁のチャンスを作る。打席にはアンディ・パヘス。彼の打球は投手の元へ転がるも、フィリーズのオリオン・カークリングが痛恨の悪送球。三塁走者キム・へソンがホームに滑り込み、サヨナラの瞬間、スタジアムは歓喜の嵐に包まれた。
この夜のロウキは、語り継がれるだろう
奇跡の夜——それは、静かにロウソクの火を灯すようなグラスノーの立ち上がりから始まり、佐々木朗希の魂を込めた一球一球が、天に届く祈りとなってマウンドを包んだ。
そして、最後の一瞬まで諦めなかったドジャースの執念が、勝利を引き寄せた。
東日本大震災で父と祖父母を失った佐々木。その悲しみを胸に、彼はマウンドに立ち続けた。「一球入魂」の言葉通り、彼の投球は天国の家族へと捧げられたものだった。きっと、空の上から誇らしげに見守っていたことだろう。

一方、フィリーズは希望を託したパウダーブルーのユニフォームで臨んだが、夢は叶わず、2年連続のNLDS敗退。勝利の色は、静かに涙ブルーへと変わった。
この試合は、MLBポストシーズンの歴史に鮮烈な印象を刻みつけた、祈りと執念が交錯する「奇跡の夜」だった。そんな風に感じた。