トレードデッドラインが近づく中、10月(ポストシーズン)を戦う球団は、場合によっては複数のピースを追加するなどブルペンや足りない戦力をアップグレードする必要がある。
メジャーリーグ独特の制度だが、例年7月末がトレード期限で、今季は開幕が遅れたこともあり多少ずれて、米東部時間8月2日の午後6時(日本時間3日午前7時)に設定されている。
フラッグディール・トレード情報
このブログを見ていただいてるコアなメジャーリーグファンの方々には、あえて説明する必要もないが、この期限を過ぎるとせっかくレンタル移籍で獲得した選手でもポストシーズンで出場できなくなるので、このトレード期限前にポストシーズンに進出できそうな球団を中心に選手のトレード移籍が成立するわけだ。
逆に地区優勝どころかワイルドカード枠でも残れない球団は、今季終了後に契約の切れる選手などを中心にトレードで主力を放出してプロスペクトといわれる若手有望株を獲得して将来のためにファーム層を充実させる。
彼らは今後のトレードの交換要員にもなるし、成長すればチームの中心選手になってくれるからだ。
チーム編成は主に各球団のゼネラルマネージャー(GM)たちが担うことになるが、ファーム層を強化しない中途半端な球団(GMも含む)は結果にコミットしたことにならない。
タンパベイ・レイズはスモール・バジェット(低予算)ゆえにファーム層を充実させてFA市場で大金を使えない分、トレード戦略で結果を出している球団だ。
そのフロントの能力に目を付けたレッドソックスは、2019年10月にレイズの編成部門ナンバー2だったチャイム・ブルーム氏を新たな編成責任者として招へいした。
GMの能力の差が球団の浮沈を大きく左右することになるが、チームを強化するカギを握るのは監督ではなくGMだ。10年もたてば結果は歴然とする。
フリードマン氏の功績が大きいドジャース
ドジャースのアンドリュー・フリードマン球団社長も2014年10月にレイズからドジャースにヘッドハンティングされてドジャースをよみがえらせた。
フリードマン氏は2005年に28歳の若さでタンパベイ・デビルレイズ(2012年よりレイズ)のGMに就任すると1998年の設立以来リーグのお荷物だったチームを2008年にリーグ優勝、ワールドシリーズまで導いた男だ。
エール大学出身で、元々はウォール街の投資銀行ベアー・スターンズ(サブプライム問題で2008年破綻)などで働いたエリート金融マンだ。デビルレイズ買収案件で現オーナーの知己を得てGMに転身したという。
GM3年目の2008年にチームを初のワールドシリーズに導き、2014年まで地区優勝2回、ポストシーズン進出4回と、ヤンキースやレッドソックスなど名門球団が多い東部地区で低予算のレイズを強豪チームへと変貌させていた。
GM就任後は限られた予算の中で戦力を整え2008、2010、2011、2013年と毎年のようにチームはポストシーズンに進出した。そうしてフリードマンは若手有望選手のリクルートにおいては球界きっての目利きという評判を取るようになった。
そのフリードマンに目を付けたのがドジャースだ。2014年10月、ドジャースは事実上のGMに相当する「ベースボール部門上級副社長」のポストを新設すると、ここにフリードマンを迎え入れた。
ちなみに、この時のドジャースはフリードマン氏に対し5年総額3500万ドルというフロントの人材としては破格の契約をオファーしたという。
しかし、その後のドジャースの躍進ぶりをみると、フリードマンは球団の期待を遙かに上回る成果をドジャースにもたらした。
ドジャースは2013年から2020年まで8年連続で地区制覇。2020年には短縮シーズンながら32年ぶりのワールドシリーズ優勝を果たす。
この10年間で王朝を築き上げた。東海岸の名門球団に対する西海岸の盟主の地位を得た。
エンゼルスはどうだったのか?
同じロサンゼルスをフランチャイズにするエンゼルスとドジャースを比べてみると面白い。
エンゼルスは2003年にヒスパニック系の実業家であるアルトゥーロ・モレノ氏がオーナーに就任。2009年、エンゼルスはア・リーグ西部地区で3連覇を達成して強豪というイメージがあった。
それから13年が経過しエンゼルスの現在地を振り返ると、マイク・トラウト、大谷翔平という二人のMVP選手がいるにもかかわらず、毎年早々とペナント争いからは脱落して下位に低迷している。
オーナーが変わって20年、昨年はペリー・ミナシアンを新GMに迎えた。モレノ・オーナーのイエスマンだったビリー・エプラー前GMよりは期待できそうだが、モレノ氏は、選手補強に関しては再三口を出してくるらしい。
GMにチーム編成の全権を与えるつもりもなく自分の気に入った選手を獲得している。
ここでも投稿したが、エプラーがGMだった頃は、大艦巨砲主義のようにプホルスやアップトンという高額の不良債権を抱えて戦力強化は思うように進まず、マイナーに有望な若手もいない。
相変わらずオーナー好みのFA選手と長期契約を繰り返していた。今季も絶望のアンソニー・レンドン内野手との長期契約もオーナー案件だったらしい。
ここでも何度か指摘したが、投手陣を整備することもなく、毎年、中古車センターのようなベテラン投手を獲得していた。案の定、結果も出ることなく、夏のトレードも中途半端だった。
ミナシアンGMは投手力を強化したが、結果は出ていない。それどころか、マドン監督も解雇した。
ドジャースのフリードマン社長がレイズのGMに就任した時に雇ったのがジョー・マドン監督だった。
オーナーの意向が強すぎてGMも思うように補強できなかったのかもしれない。そんな球団がエンゼルスだ。GM以上にオーナーに問題がありそうだ。
個人的にはエンゼルスのファンではない、もともとダルビッシュがいたレンジャーズや日本人スタッフなども多いパドレスのほうが気になるし、上原、田澤がいた頃のレッドソックスは好きだった。
エンゼルスを応援するとフラストレーションがたまるので、大谷翔平だけを見ていきたい。
▼記事参考
考察:なぜドジャースとエンゼルスは10年でこれほど差が付いたのか(1) | 2022年版 ロサンゼルス・エンゼルス大全