MLB メジャーリーグ物語

海を渡ってMLBで活躍する日本人メジャーリーガーたち

入来祐作、戦力外から波乱の野球人生 巨人軍のエースから用具係りへ、そして...

 

野球にこだわり続けてきた男の葛藤と生きざま

 

 

『バース・デイ』は、お気に入りのドキュメンタリー番組。今回はこの男が再登場。 元巨人のエース・入来祐作の「今」に番組が迫った。

 

※これは2015年5月の記事の再ポストです。

 

 

巨人のエースから2軍の用具係りに…

 

闘志あふれるピッチングで野球ファンの記憶に残るピッチャー入来祐作。彼は2008年に戦力外通告をうけ、2軍の裏方として生きていた。

 

プライドを捨て、ひたむきに生きる入来の姿は、トミー・リー・ジョーンズが出演する缶コーヒーのCMでも話題を呼んだ。

 

そんな入来に思いも寄らない転機が。こみあげる涙…。42歳の新たな人生とは?

 

1996年にドラフト1位で巨人に入団。野球のエリート街道を歩み、当時の長嶋茂雄監督も彼を評価していた。

 

打者に向かっていく闘志あふれるスタイルが持ち味だった。兄の入来智プロ野球選手として活躍。2001年のオールスターでは、兄弟リレーが実現している。

 

この年、入来は、チーム最多の13勝をあげ、セ・リーグ最高勝率をマーク。プロ5年目で、巨人のエースと呼ばれ、誰もが知るスター選手の仲間入りを果たした。

 

 

メジャーリーグで挫折した野球人生

 

そして10年目を迎えた2006年、メジャーリーグに挑戦。年俸8600万円(推定)でニューヨーク・メッツと契約し、野球選手として更なる高みにチャレンジした。

 

しかし、入来の野球人生はここから狂い始める。

 

オープン戦でチャンスをもらったものの、フォアボールを連発し、マイナーに降格。そして、1度もメジャーに昇格できないまま、シーズンが終了。そのまま自由契約となった。

 

その後、35歳で日本に戻り、横浜に入団。しかし、かつてファンを痺れさせていた力強い投球はできなかった。

 

そして2008年、36歳になった入来は、戦力外を通告された。

 

野球一筋の人生だった。違う職業に就くなど、想像もできなかったという。入来には、野球にしがみつくしかなかった。

 

「球団で働かせて欲しい」入来は必至に頼み込み、バッティングピッチャーになった。打者の調整のため、ひたすら投げる。年収は20分の1。それでも、ユニフォームが着れることが嬉しかった。

 

ところが、喜びもつかの間、思わぬ壁が立ちはだかる。

 

バッティングピッチャーは、バッターに打たせるために投げなければならない。しかし、打たせようと力を抜いて投げると球をコントロールすることが出来なかった。(適正というものがあるのですね、バッティングピッチャーは立派な専門職なのですね。)

 

そして、バッティングピッチャーも失格。球団は入来に二軍の用具係を命じた。

 

 

 

野球エリートから裏方…

 

用具係の仕事は、選手が使う道具の管理。そのひとつが、練習で使ったボールを消しゴムと一緒に機械に入れ、汚れを落とす。その数、約1500個。3時間かけて綺麗にし、次の練習に備える。(へぇ~、そんな事までしているんだ)

 

試合の時は、開始5時間前に球場入りし、選手の荷物を運び込む。(一般人なら出来そうだけど、過去の栄光がある人にはつらいだろうなぁ。)

 

試合中も仕事はいっぱいある。ゲーム展開を記録してまとめる。終了後には、後片付けが待っている。こうした裏方作業をするのは、野球人生で初だった。

 

しかし、この仕事をしたからこそ、プロ野球選手は、多くの人に支えられているという事を実感した。入来は4年間、用具係として働いた。

 

 

就任会見で涙する男の姿が、そこにはあった!

 

そんな入来に突然転機が訪れたのは、2014年12月。なんと、福岡ソフトバンクホークスのコーチへのオファーが来たのだ。

 

それは、新監督・工藤公康、直々のオファーだった。工藤が解説者時代にキャンプを取材中、黙々と裏方をしている入来が目に留まったという。

 

「野球への情熱を選手に伝えて欲しい」それが工藤監督が入来に託した思いだった。(工藤いいね、胸アツですよ)

 

コーチの就任会見では、涙する入来の姿があった。

 

福岡市にある雁ノ巣球場で入来は現在、3軍の投手コーチを務めている。投手コーチ2名で11名の投手を指導している。

 

3軍とは、主にまだプロのレベルに満たない選手を育成する機関。その一方で、常に結果が求められるプロの世界では、戦力外通告の恐れがある選手が集まる場所とも言える。

 

不安の中で、明日を夢見る彼らの指導者として、入来は6年ぶりにユニフォームを着た。自らの経験を元に、彼らが一人前のプロ野球選手になれるかが、これからの入来の使命。

 

コーチという立場だが、練習中、入来は率先して練習の準備作業を行う。そして選手たちにも促す。それは、選手たちに野球への感謝と情熱を持って欲しいというメッセージだ。

 

コーチに就任して4か月。入来の第2の人生は、始まったばかりだ。

 

プロ野球の頂点から裏方の用具係へ。波乱の人生は、新たな局面を迎えた。コーチとして、どんな手腕を見せるのか、これからも見守りたい。七転び八起きの入来の人生。

 

彼が寄り添った選手たちが、カクテル光線の下で大活躍する日が来ることを期待したい。

 

 

 

【プロフィール】

 

入来祐作

福岡ソフトバンクホークス三軍投手コーチ

生年月日:1972/08/13

背番号:99

出身:宮崎県

投打:右投げ右打ち

経歴:

  1. PL学園高-亜細亜大学本田技研
  2. 読売ジャイアンツ (1997 - 2003)
  3. 北海道日本ハムファイターズ (2004 - 2005)
  4. ニューヨーク・メッツのマイナー(2006)
  5. トロント・ブルージェイズのマイナー(2007)
  6. 横浜ベイスターズ (2008)

 

TBS系ドキュメンタリー「バース・デイ」

 

夢を抱き、戦いに挑み、過酷な現実に直面した者たちに訪れる 〝人生に刻まれた 忘れられない大切な一日″ その忘れられない一日を番組では『バース・デイ』と呼び、毎回、番組で取り上げる主人公が新しい自分に生まれ変わる瞬間を紹介していくドキュメンタリー番組。