MLB契約情報
前田健太と“意中のチーム”ロサンゼルス・ドジャースとの契約が、ようやく正式に発表された。フィジカルチェックで肘や肩への疑念が報じられ、進展が危ぶまれていたが、蓋を開けてみればその契約内容は極めて「異例」なものだった。
メジャー平均を下回る「低年俸」と、破格の「出来高」
AP通信などによると、契約の詳細は以下の通りだ。
- 契約期間: 8年間
- 契約金: 100万ドル
- 基本年俸: 年間300万ドル(計2,400万ドル)
- 総額(保証): 2,500万ドル
1年あたりの基本給300万ドルは、現在のメジャーリーガーの平均を下回る数字だ。前田サイドとしては、足元を見られたと言わざるを得ない条件だが、その分、インセンティブ(出来高)の比重が異常なまでに高く設定されている。
細分化されたインセンティブの内容
前田の契約には、リスクを回避したい球団側の思惑が色濃く反映されている。
- ロースター入り: 開幕25人枠入りで15万ドル
- 先発登板数: 15試合・20試合到達で各100万ドル。さらに25試合、30試合、32試合到達ごとに各150万ドルを上乗せ。
- 投球回数: 90イニングから10イニング刻みで、各25万ドルを上乗せ。これらをすべてクリアした場合、8年間の総額は最大1億620万ドル(約127億4,400万円)に達するという。
ドジャースを縛る「ぜいたく税」の壁
なぜこれほどまでに極端な契約になったのか。背景にはドジャースの台所事情がある。MLBには年俸総額の上限(サラリーキャップ)はないが、一定基準を超えた場合に課せられる「ぜいたく税(Competitive Balance Tax)」が存在する。
2015年、ドジャースは過去最高額となる4,360万ドルの制裁金を支払った。この負担を軽減するため、新体制となったフロント(フリードマン編成本部長ら)は、FA市場での大型補強を控え、リスクの低い契約やトレード主体の補強へと方針転換を余儀なくされているのだ。
他の日本人投手との比較
過去の日本人先発投手の移籍時と比較すると、前田の「基本給の低さ」と「契約期間の長さ」が際立つ。
- 田中将大7年 1億5,500万ドル出来高なし
- ダルビッシュ有6年 5,600万ドル最大出来高 1,015万ドル
- 松坂大輔6年 5,400万ドル最大出来高 1,700万ドル
- 黒田博樹3年 3,530万ドル出来高なし
- 前田健太8年 2,400万ドル最大出来高 1億620万ドル
厳しい船出、問われる「タフさ」
さらに驚くべきは、近年のスター選手の契約では常識となっている「オプトアウト(契約破棄権)」や「トレード拒否条項」が付帯していない点だ。
ドジャース側は、広島東洋カープへ支払う譲渡金(2,000万ドル)を含め、実質的には年間600万ドルの投資と考えているだろう。
これは先発ローテーションの4〜5番手級の評価だ。一方で、1球も投げずとも年俸1,100万ドル以上を受け取る先発投手がチームに4人もいる現実がある。
前田健太がこの「格差」を跳ね返し、最大額のインセンティブを掴み取れるか。それは、彼がメジャーの過酷なローテーションを8年間守り抜く「タフさ」を証明できるかにかかっている。
※1月9日の記事を加筆訂正しています。
