今オフはメジャーリーグ(MLB)の選手たちの大型契約が続いている。
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代表的な選手では、デビット・プライスが7年で2億1,700万ドル(1ドル120円で計算しても約261億4,500万円)、ザック・グリンキーは6年2億600万ドル(同247億2000万円)。この高額契約には驚かれた方も多いと思うが、ここ数年、球界における年俸の高騰化をいっそう激化させる出来事が連続している。
その原因を「Forbes Japan」が解説していたので、それを参考に考えていきたい。根底にあるのは、経営が好調だということ。ここまで好調だったことはなかったという。それでは、なぜ、経営が好調なのか?
1.放映権料による飛躍的な収益の伸び
2015年のMLBの収益は15年連続で拡大した。2014年より5億ドル上回る約95億ドル(約1兆1,450億円)の収益を記録した。MLBの各フランチャイズの価値は平均で現在12億ドル(約1,450億円)をつけている。
この巨額資金流入の最大の理由は、多様化するメディアに対する放映権料だ。
FOXとTBSとの124億ドル(約1兆4,900億円)のテレビ放映権契約に加え、近年、多くのチームが独自で10数億ドル(1200億円程度)のテレビ契約を取り付けている。
この一連の動きの中でも最も注目されるのが、ケーブルテレビ大手タイム・ ワーナー・ケーブルと、地域向けスポーツ専門局「SportsNet LA」を共同設立するために、ロサンゼルス・ドジャース が期間25年、総額83億5,000万ドル(約1兆60億円)で2013年に交わした契約だ。
このテレビ局は、タイム・ ワーナーと他のケーブルテレビ局の契約が成立していないことからロサンゼルス地区の7割の世帯で視聴出来ない状態だが、契約金は滞りなく入って来る。その潤沢な資金で昨シーズンのドジャースの年俸総額は3億ドル(約361億円)を超えた。
ドジャースは、MLBの中でも最高の32億ドル(3,855億ドル)の資産価値を持つニューヨーク・ヤンキースよりも多く、選手に報酬を支払っている数少ない球団だ。ヤンキースのテレビ放映権は全体で77億ドル(約9,277億円)だ。
しかしこれは、市場規模の大きい全国的人気の一部の球団に限った話ではないという。テレビが提供するコンテンツにおいて、ほぼ間違いなく一番価値が高い存在としてプロスポーツが挙げられるようになった。
12月4日に、アリゾナ・ダイアモンドバックスと契約を交わしたザック・グリンキーは、今年初めにテレビ局と15億ドル(約1807億円)の契約を結んでいる。
セントルイス・カーディナルス、フィラデルフィア・フィリーズ、テキサス・レンジャーズ、ヒューストン・アストロズ、サンディエゴ・パドレスの以上5球団は、この5年間で数十件の放映権を勝ち取っている。
これ以外にもシアトル・マリナーズがローカル局と大型契約を結び1年で1億1500万ドル(138億円)の放映権料を手にした。これがあるからロビンソン・カノ―と10年2億4000万ドル(288億円)を払える計算になる。
また、スポーツライターの丹羽政善氏が、1年ほど前に、こうした内容に触れている。
日経新聞電子版に掲載されたその記事によれば、MLBには「MLB.COM」という公式サイトからの収入もあるということで、00年に立ち上げ、開設からの4年間は各球団が年100万ドルずつ運営に必要な資金を出す予定だったが、3年目あたりから黒字に転換。
特に、MLBの全試合を視聴できる「MLB.TV」が莫大な利益を生み出している。それを原資とした各球団への分配金が年間2000万ドル(約24億円)に達するともいわれ、放映権料と同じく「金のなる木」になっている。この事業モデルでも、日本のプロ野球は、はるかに後れをとっていると指摘している。
2.収益分配制度
前MLBコミッショナーのバド・セリグが、2002年にMLBの収益分配制度を変更した時、収益の少ない球団が、大きな市場を持つ他の球団に負けないための後押しをすることが、その目標だった。この制度改革は、10年余りで実に大きな効果をもたらした。
MLBに加盟する全球団から、それぞれの純収入のうち31%を集め、全30球団の間で均等に分配する。それに加え、MLB機構が持つ基金を、各球団の収入を基に計算された一定の割合で割り付けするという方法もとられている。
この制度により、シーズン開始時に、収益の少ない球団が入場券を1枚も売っていないのに、また営業権契約を1件も取れていないのに、黒字発進出来るという現象が起きている。
例えば、ダイアモンドバックスはこの3年間で、収益分配制度により約800億ドル(9兆6,385億円)受け取っている。グリンキー投手獲得にこの分配金の一部が使われたことは間違いないだろう。
3.年俸の暴騰に歯止めをかける「サラリーキャップ制度」がないMLB
構造的に見て、MLB選手の報酬が上がり続ける最大の理由は、おそらく「サラリーキャップ制度」が導入されていないことだ。
規定された金額を超える給料を払っている球団はぜいたく税を支払わねばならないが、選手が喜ぶ金額をそのまま出していいことになっている。
アメフトのNFLやバスケットのNBA、北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)では、サラリーキャップ制度がこれを防いでいる。
NBAでは現在、選手との契約額が2290万ドル(約27億6,000万円)を超えてはならないとしている。ちなみに今年この額を上回る契約をした野球選手は14人いた。
今後フリーエージェント制が導入されることを考えれば、契約額はどんどん高くなっていくだろう。
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