MLB メジャーリーグ物語

海を渡ったサムライ・メジャーリーガーたち

田中マー君の移籍は?NPBはこうするべきだった!?

 

MLB移籍情報

 

田中将大MLB移籍交渉から読み解く、NPBが持つべき「グローバル戦略」の欠如

 

長きにわたる交渉の末、NPB日本野球機構)とMLBメジャーリーグ機構)の間で進められてきた新ポスティングシステムの締結が、ようやく最終段階を迎えたという報道が流れている。

 

しかし、その交渉過程と提示された新ルール案を見るにつけ、NPB側がMLB側の明確な「買い手戦略」、すなわち入札金を低く抑えたいという意図に対して、終始後手に回っているという印象は拭えない。NPBは「ポスティング制度の復活」という目先の目標に焦りすぎたのではないか。

 

欠けていた「契約の国」アメリカでの戦略的準備

 

MLBは、全米放送の放映権料が来季から倍増し、各球団への分配金が大幅に増額されるなど、潤沢な資金力を背景に、圧倒的な交渉優位に立っている。

 

にもかかわらず、選手の保有権を持つはずのNPB側から、優位な交渉を進めるための「明確な戦略」が伝わってこないのはなぜだろうか。

 

本来、2年ごとに内容を検討し改定もあり得るとされていた日米間の取り決めに対し、NPBがその間にどれだけの準備をしていたのかが大いに疑問である。

 

「契約の国」アメリカのプロスポーツビジネスの専門家集団を相手にするならば、最低限の備えとして、NPBの「アメリカ現地事務所」を設立するべきだった。

 

経費は各球団が負担すれば済む話だ。仮に各球団から5千万円を集めたとしても、一人の選手をMLBに送り出すことで日本球団に入る収益は数十億円に上る。これは育成や設備投資、戦力強化のための投資として、決して高すぎる支出ではない。

 

スポーツビジネスに精通した専門スタッフや弁護士を専属で雇用し、日常的な情報収集と、優位に立つための交渉を継続的に進めていれば、結果は大きく異なったはずだ。長年にわたり指摘されてきた「日本人の外交下手」が、ここでも露呈してしまったと言わざるを得ない。

 

 

ダルビッシュ氏の提言に学ぶ「選手利益」の確保

 

こうした状況に対し、当時レンジャーズに在籍していたダルビッシュ有投手の父、ファルサ氏(53)が改めて訴えた「移籍金制度の導入」は、一つの重要な提言だ。

 

同氏が主張する「選手と球団の間で移籍金を決め、その後、代理人を通じてその額を出せる球団と個別に交渉する」という方式は、旧来の制度が抱えていた以下の二つのデメリットを解消できる。

 

①入札額の高騰:青天井の入札額による球団間の過熱競争。

②独占交渉の弊害:一球団としか交渉できず、結果として選手側が年俸交渉で不利になる。

 

MLB側は、選手への総投資額を「入札額+年俸総額」の合計額と捉える。高額な入札金が設定されると、相対的に選手への年俸が低く抑えられ、独占交渉の状況下では選手側が条件を呑むしかないという構造的な不利が生じる。

 

今後も海を渡ることを目指す選手たちの利益を確保し、正当な評価を勝ち取るためにも、NPBは目先の交渉に終始するのではなく、長期的なビジョンに基づいた「プロフェッショナルな交渉体制」を確立することが急務である。

 

今回の田中将大投手の移籍を巡る議論を、NPBが真のグローバルスタンダードを持った組織へと変革する契機としなければならない。